文学

ガブリエル・ガルシア=マルケスの半生、”生きて、語り伝える”

ガルシア=マルケスコロンビア出身のノーベル賞作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスは、マジック・リアリズムとしょうされる現実を寓話的に拡張して、現実とも夢とも思える独自の世界を描き出す文学者。 そんな、ガルシア=マルケスが自信の半生を描いた自…

アントニオ・タブッキ の 「島とクジラと女をめぐる断片」

アントニオ・タブッキアントニオ・タブッキというイタリアの作家の作品、「島とクジラと女をめぐる断片」と題されたちょっとした作品を読んでみた。 タブッキの作品は、初めて読むのだけれども、この人物は、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアの研究者で…

ジョルジュ・ペレックの「さまざまな空間」という重大な指摘

ジョルジュ・ペレックジョルジュ・ペレックは、実験文学集団「ウリポ」のメンバーでもあるフランスの文学者。実験文学集団の所属であるので、当然、その文学作品は、物語性のみではなくて、その作品の執筆手法にもこだわったもの。有名な作品で、最近邦訳で…

2009年の文学印象を自分のブログから振り返る

文学振り返り続けます、2009年を。ということで、本日は、文学。 文学は、なかなか本当に同時代的にとらえることができなくて、たまたま私が今年読んだというだけというところもあるのだけれども、振り返ってみる。 安部公房全集個人的には、2009年の文学的…

日仏学院にて、「幼女と煙草」の作者ブノワ・デュトゥールトゥルのお話を聞いてきた

日仏学院フランス文化を伝える施設と簡単に表現していいのかよくわかっていないのだけれども、日仏学院というところに行ってきた。目的は、最近このブログにもエントリーした、「幼女と煙草」の作者ブノワ・デュトゥールトゥルさんの講演会があったので聞き…

「幼女と煙草」というちょっとした皮肉めいた物語

ブノワ・デュトゥールトゥル今回紹介する文学作品「幼女と煙草」は、ブノワ・デュトゥールトゥルというフランスの作家による作品。この作家、日本ではこの作品が初翻訳みたいだけれども、本国ではそれなりに評価されているらしい。 ちなみに、帯には”サミュ…

収容所群島第5巻は結構読みやすいほうです

収容所群島さて、ここで順次紹介している、ソルジェニーツィンの収容所群島ですが、今回は第5巻。 読みやすさこの第5巻の印象は、これまでの中で、最も読みやすいタイプの作品であるというところ。特に、収容所からの脱走の様子を描いた章はちょっとした緊張…

世界的ベストセラーだという「世界の測量」は・・・

ダニエル・ケールマンドイツの若き期待の文学者、ダニエル・ケールマンの世界的にベストセラーになっているという作品、「世界の測量」の話題を何かときくので、何なら読んでみるかということで、読んでみた。 ガウスとフンボルトこの作品は、数学をはじめと…

ヘンリー・ミラーのエッセイ集 殺人者を殺せ

コレクションさて、知らない間にこっそりと刊行されていくヘンリー・ミラー コレクションですが、その第10巻にあたる「殺人者を殺せ」は、ヘンリー・ミラーのエッセイを収録した作品。ちなみに、巻末の解説によると、当初掲載予定であった「冷蔵装置の悪夢」…

ソ連の暗部 収容所群島 第4巻を読む

ソルジェニーツィン 旧ソ連のノーベル賞作家、ソルジェニーツィンがソ連時代の恐怖政治の様子を収容所の状況を中心に描いた作品が、収容所群島。本編では3巻7部構成。現在日本語で手に入りやすい物は復刊されたものでハードカバーで6巻構成。ただし、徐々に…

アラン・ロブ=グリエ の反復を読んだ

ヌーヴォー・ロマンさて、第二次大戦後、その反省も踏まえてか、それぞれの芸術分野でそれまでの情緒によった表現からより前衛的、もしくは、心理的、内面的なものが重視された表現が生まれていったのだけれども、文学の世界でのそれは、ヌーヴォー・ロマン…

そして、ついに、正に、安部公房全集を完読する

補巻まれに見るかっこいい文学全集といっても言い過ぎではないであろう素敵な装丁に収められた安部公房全集は、編年体で編集されていて、第29巻をもってして、安部公房氏の生涯にたどり着いた形で一度幕を閉じた。その後、補巻としての第30巻の予告がありな…

サミュエル・ベケット証言録をよむ

サミュエル・ベケット私自身は、20世紀最大の文学者の一人であり、言語の究極に迫った人物でもあると思っている、文学者・劇作家、サミュエル・ベケット。その関連書籍はいくつかあるけれど、2008年末に日本語で出版された書籍”サミュエル・ベケット証言録”…

莫言の”転生夢現”は”百年の孤独”に匹敵する一族物語

中国現代中国の作家でノーベル賞に最も近いアジア人とも評される莫言。その日本語翻訳版としては2008年に出版された最新作”転生夢現”を読んだ。ちなみに、中国では2006年ごろに”生死疲労”というタイトルで出版。 一族の物語莫言の長編はどれも長いのだけれど…

2年ぐらいかけて読み終えた ペソアの不安の書

フェルナンド・ペソアポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアは、19世紀後半から、20世紀前半を生きた詩人。生前は、その作品はほとんど公開され認められることはなかったのだが、死後に残された作品が編集され公開されると世界に知られる存在となった。 その…

2008年の文学を自分のブログから振り返る

さてさて、映画に次いで文学の2008年を大晦日に振り返ってみる。ただ、文学はたまたま私が今年読んだというだけで、2008年という時勢はあまり関係ないかもしれないです。 第一位今年読んだ作品がどの程度あるのかは、余りよくわからないけれども、感覚的には…

現代アメリカ最大の謎の文学者、トマス・ピンチョンのヴァインランド

トマス・ピンチョンバートルビーと仲間たちでも登場した寡作にして、謎めいた作家、トマス・ピンチョン。その作家の、ヴァインランドを今頃読んでみることにした。 17年ぶりその前の作品、"重力の虹"から17年ぶりというのだから。恐るべし。 舞台は、なんと…

悲しみの受け入れ方 バオ・ニン 戦争の悲しみを読んで

ついでに残雪の”暗夜”を読みたくて購入した文学全集に収められていたという理由で、ついでに読むことになったのば、ベトナム文学者 バオ・ニンの”戦争の悲しみ”。 ベトナム戦争ベトナムの戦争に次ぐ戦争の歴史を生き抜いた軍人である人物の回想録的文章とい…

中国の不条理な作家 残雪の暗夜を読む

世界文学全集河出書房から続々と出版されている世界文学全集は、なかなか渋い作品を取り上げていて、全24巻におよぶ。 そんななか、かなり意外中の意外な作家、残雪の作品も収録されているのが第一集の第6巻。残雪は、中国の女カフカとか、変な呼び方をされ…

モーリス・ブランショ 最後の人/期待 忘却

男女20世紀を代表する作家の一人と、私は思っているモーリス・ブランショの作品集 最後の人/期待 忘却 を読んだ。いずれも、男女の会話を中心とした作品の展開で、特に、”期待 忘却”は、短い文節が切り刻まれながら並べられた作品。 文学の極限”最後の作家”…

モーリス・ブランショ が生誕100年でした

100年さて、超難解な文学作品で、文学の限界に迫った作家、モーリス・ブランショ。あまりにも、難解でいまや、読者がとっても少なくなってしまっているけれども、そんな、モーリス・ブランショは、今年2008年が生誕100年だったのに、最近気がつきました。 文…

迷宮の将軍は、シモン・ボリバル

ガルシア・マルケスさて、まもなく日本でも公開される映画”コレラの時代の愛”の原作者、ガルシア・マルケスの"迷宮の将軍"を読んでみた。 歴史物激しくフィクション度の高い作品を各作家である一方で、ジャーナリスト出身ということもあってか、ノンフィクシ…

遂に、この夏、コレラ時代の愛が封切られる

ノーベル賞作家先日行った、"ハンティングパーティー"の予告編で、知りました。遂に、中南米をというか、現代を代表する作家で、百年の孤独などの作品で知られる、ガブリエル・ガルシア=マルケスによる作品”コレラ時代の愛”が、映画化されて、そして、この夏…

書けなくなる症候群 バートルビーと仲間たち

スペインスペインの現代作家、エンリーケ・ビラ=マタス の作品”バートルビーと仲間たち”を読んでみた。 バートルビー症候群この本のタイトルにある、バートルビーとは、書けない症候群のことで、ある時点以降にまったく小説や詩などを発表しなくなった作家達…

倉橋由美子 パルタイを今頃読んでみる

読み損ね実は、結構本を読んでいても、つい、読み損ねている作品があったりするけれど、私にとってのそれは、例えば、倉橋由美子作品。 実は、今まで一作品たりとも読んだことは無かった。 ということで、何となく本屋で手にしまった勢いで、読んでみた。 初…

すばらしい老い方 養老訓

養老孟司氏養老孟司氏の養老訓という本を読んでみた。なんとなく、疲れていたこともあって、たまには人生訓的な物でも読んでみようかという心境から。 年寄り向け?で、読んでみたのだけれども、内容的には、年寄りがそれよりは少しは若い年寄りに苦言を呈し…

コレラ時代の愛 ガルシア・マルケス

はじめに現代を代表するコロンビア出身のノーベル賞作家、ガルシア・マルケスの”コレラ時代の愛”をようやく最後まで読んでみた。というのも、途中まで読んだところで、友人にこの本を貸したところ、そのまま、返ってこなくなってしまって、しばらく読むこと…

ちょっと昔の物でも

テキスト昔から、テキストとか数字とか、そういったものが好きで、だから、特にテキストに依存した(情景描写や情緒に依存したではなく)タイプの文学が好きだし、データの山を見つけるとちょっとうれしくなるし、だから、無駄にプログラムを書いて喜んでみ…

ヌーヴォー・ロマンを代表する作家 ロブ=グリエ氏 死去

R.I.Pサミュエル・ベケットやナタリー・サロートなどと共に、ヌーヴォー・ロマンを代表するフランスの作家、ロブ=グリエ氏が亡くなった、85歳。 テキストの意義情緒的な物が否定されて、深層心理が重要視され始めた時代がかつてあった。美術は、抽象化してい…

奇才という言葉にだまされて ラナーク

スコットランド 今回紹介するのは、スコットランドの小説家 アラスター・グレイ の処女作である、ラナーク。本国では、1981年に最初に出版された作品。帯の大々的な宣伝文句に思わずだまされて、読んでみることにした。 実験的?一応、様々な側面から、実験…