収容所群島第5巻は結構読みやすいほうです



収容所群島

さて、ここで順次紹介している、ソルジェニーツィン収容所群島ですが、今回は第5巻。


読みやすさ

この第5巻の印象は、これまでの中で、最も読みやすいタイプの作品であるというところ。特に、収容所からの脱走の様子を描いた章はちょっとした緊張感を感じながら先へと読み進めることが出来るそれになっている。
ここにある読みやすさは、そういった面白さの一方で、この第5巻に描かれているところが、収容所にある生きる事の望みであることにも起因するように思う。


文学

この巻の最初の方に描かれるのは、収容所における文学。ソルジェニーツィンが如何に収容所において文学を詩を創造したのか。紙に書き留めて残す事の出来ないそこで、唯一小さな紙片を利用しての校正作業をして、そして、それを記憶すると廃棄するという手法での創作。そこには、人には何らかの希望が必要であり、その希望というのは、自己を慰めると共に外部へと発散の可能性を持つそれであると言うことを強く感じた。誰にも犯すことの出来ない脳の中に、作品を収めていく。一方で、それは、ソルジェニーツィンのみの行動ではなく、そのような行為を行っていた人が他にも多くいたという事実。文学は、まずそれを創作する人の力となり、そして、それが公開されると、さらなる別の意味をもつものであるということ。そして、恐らくはこれが日記ではなくて詩であることが重要なのだと思う。凝縮されたテキストの力を再認識させてくれる。


脱走

もう一つの希望は、脱走。脱走もまた、もしかすると、それを構想することにも大きな希望が含まれているのかもしれない。そして、それを実行する人々がいる。しかし、それはリスクを伴って、すぐに射殺されるかもしれない。そして、例え外部へと逃げ出しても、誰もいない場所に逃げれば、食料もなく、水もない場所では生きていくことが出来ない。しかし、人がいる場所へ行けば、そこでは通報される恐れが残る。それでもなお、脱走を試みる人々はあとを絶たないという事実の示す意味とは。
脱走劇を描いた「白い仔猫」の章は、まさにその脱走劇の夢と現実が描かれているようでもあるし、非常に興味深い1章である。


さらなる

しかし、希望の種子は、それだけには留まらない。スターリン政権の末期ということもあってか、徐々に収容者が力を持ち始める。密告者は殺害され、時にストライキが決行される。徐々に、圧倒的に支配されていた収容者があるレベルまでの権利を確保し始める。時にその反動として粛正的な行為を受けもするが、しかし、その胎動は留まることは無く、そして、様々な収容所へと伝搬していく。


しかし

そう、ここでは収容所における希望が描かれている。一方で、とてつもない多くの人々がそこで悲惨な体験をし、そして、死亡していった。そのような場所で生き残ること、そのような場所でも生き残ると言うことは、運と狡猾さ密かなる支えと、そして、時に反逆であると。


後1巻

そして、残りは第6巻になった。大作すぎてここまでたどり着くまでに多くの時間を必要とはする物の、しかし、これだけの物量のテキストを読み込むことによってのみ感じることが出来ることも多くある(勿論ベケットのような限られすぎたテキストが表現する世界もある)。とても、多くの事をもたらしてくれるすばらしい作品が、もう残り1巻になってしまったとも感じる。
さて、また、読み始めるとする。




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発売元 : ブッキング
発売日 : 2007-03-17 (単行本)
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