ソ連の暗部 収容所群島 第4巻を読む



ソルジェニーツィン

旧ソ連ノーベル賞作家、ソルジェニーツィンソ連時代の恐怖政治の様子を収容所の状況を中心に描いた作品が、収容所群島。本編では3巻7部構成。現在日本語で手に入りやすい物は復刊されたものでハードカバーで6巻構成。ただし、徐々にこれも入手困難になりつつある気がする。
で、今回は、4巻目を読み終えた。


文学的

作品の印象としては、各部で作品スタイルが徐々にではあるが変化していっている様に思う。最初の方では、どちらかというと、収容所の悲惨な状況を告発的に描いているという印象だったのだけれども、特にこの全体構成の中では第2巻にあたる3・4部では、そこに留まらない収容所内のみではとどまらない現実を描き上げている。それは、時に非常に文学的な考察が含まれていて、単純な告発には留まらない普遍的な真実への追究を感じさせる物でもある。


蔓延する

ここに描かれていることをそのまま信じるとすれば、恐怖政治が結果としては、何も生み出しはしないことをひしひしと感じさせる。収容所の中も、収容所の監視員も、収容所の周りに住む人も、そして、収容所に送られることに恐怖を感じ続ける一般人の生活さえも、人々はそれぞれに、それぞれの事だけを考えて生きるようになる。人間的な協力関係が失われて、ただ、強烈な独裁による力だけが国をむりやり引っ張ろうとする。しかし、それだけで国力が維持できるのかというと・・・。


時代

しかし、時代は困難なのだと思う。一方では、世界大戦もあり。ということを考えると、確かに、ここにえがかれている世界の異常さを感じると同時に、例えば、当時の日本やドイツがどうであったかというと、それをのような文学的なレベルで描いたものを読んだことがないことと、私自身の知識レベルの貧困さにより、どのように比較できるのかがわからないのだけれども、逆に言えば、今の日本や世界の(勿論全てとはいわない)にある民主主義というものは、例え多くの矛盾を持っているとしても、まだまだ十分にましな状況なのかもしれないとも思う。だから、むしろ、さらに世界は良くする事の出来る可能性も持つのかもしれないとも思ってみたりする。


どんな

別の視点からすると、いずれにせよ、組織がある以上、上下関係という物があり、指令者と行動者に分かれる。その関係性の中にある民主主義との矛盾を如何に理解しながら、一方で、如何にして、向かうべき方向へと全体を導いていくかということは、やはり深く考えなければならない。力業に頼れば、ここに描かれているような事態に陥る。一方で、方向性をしめすことができなければ、それはそれで、力強さに欠けるであろう。どんな状況であることがあるべき姿なのか、それは永遠の課題でもあるのだろうけれども。


いずれにせよ

いずれにせよ、これは非常に重要な示唆を多く含んだすばらしい作品だということが、ここまで読んできて少しずつ身にしみてきた。この続きを読むのがとても楽しみ。




twitterLINKとは?



関連リンク:
dLINKbRING.Labo.dicmulsearch.ソルジェニーツィンの個人史
dLINKbRING.Labo.dicmulsearch.収容所群島
関連サーチ:
収容所群島(AMAZON.co.jp)
収容所群島(Google)
収容所群島(Technorati.jp)
収容所群島(flickr)
Powered BY AmazoRogi

収容所群島〈4〉
発売元 : ブッキング
発売日 : 2007-01 (単行本)
売上ランク : 301314 位 (AMAZON.co.jp)
¥ 3,675 通常2〜4週間以内に発送
Powered BY AmazoRogi Data as of 2009-08-16
See detail & latest visit AMAZON.co.jp