独自の教育を貫くレッジョ・エミリアの幼児教育を紹介する展覧会を鑑賞してみた



ワタリウム美術館

青山というか原宿というかに、こぢんまりとしながらも、面白い視点からの展示を行う美術館、ワタリウム美術館がある。そこで、現在行われている展示がとても面白くて、「驚くべき学びの世界展」という展示。この展示は、純粋な美術の展示というのではなくて、イタリアのレッジョ・エミリアという街において行われている独自の幼児教育の内容を紹介する展示である。2011年7月31日までと結構長い期間やっている。


本来的な可能性

この街ぐるみの教育を端的に表現するならば、子供たちに今ある世界の常識と呼ばれるようなものを教え込もうとするのではなくて、人間が本来的に持っている能力をそのまま開花させようとする教育、といったところだろうか。
こういった、言い回しが使われるケースは、多くあって、だけれどもそれは、まやかしのように使われているだけに思われることも多くあるのもまた事実であろう。さて、このケースはどうだろうか。そんな、ちょっと斜に構えた視点も持ちながらこの展示を見てみるというのもいいかもしれない。


アート

自由な発想というのは、アートとの親和性が高いのも事実だろう。そう、このレッジョ・アプローチがアート的であると言うこともあって、美術館という空間で展示がされているというところでもあるに違いない。
展示は、主に、レッジョ・エミリアで行われているいくつかの教育実践の内容をまとめたペーパーによっている。巻き上げるような形式でそのペーパーが空間に配置されていて、その内容に伴ったビデオの上映や、実際に子供たちによって作られたオブジェが並べられるというスタイル。なので、どちらかというとそのテキストを読むというのが感傷スタイルになる。


消尽する

美術を鑑賞する場合に、我々は既成の概念を超えて、価値を認めようとする立場に立つことになり、その日常ではない価値を受け入れるのか否かという葛藤を少なからず感じる。そういった葛藤を感じてしまう時点で、すでに自分自身の感性は何かに規制されていて自由からほど遠い感性になってしまっているとも言えるのだろう。しかし、一方で、すべてがすべてその価値が認められるべきものではなく、ある種の基準によって、いずれにせよ、価値判断が行われなければならないと言うことも事実だろう。
翻って、子供たちの自由な発想についてはどうだろうか。このレッジョアプローチでは、様々な実践が行われいるようだ。そして、そこで、子供たちは自由に感じ、それを行動に移し、そして、時に何かを形作る。そして、大人はそれをサポートしながら、そして受け入れる。もし、我々がすべてのその自由の行為にも、価値があると断言したときに、どのようなことを感じるのだろうか。むしろ、価値の喪失におびえるところがあるようにも思う、つまり、すべてが認められる状態になったときには、むしろ、価値が消尽してしまっていると。自由とは、つまりむしろ喪失なのではないかと、そう感じることもありえる。


しかし

それでも、この展示において展示されているさまざまな文章や映像やオブジェクトを見る限りにおいては、そのような価値が消尽してしまって何もかもが、ただ散乱した様子に過ぎないと感じることはなかった。その価値をすべて認めても、なお、そこには、何か形をなしたものがそこに残っているということ。これは、偉大な成果なのだと思う。そして、そのようになる一つの重要な要素は、子供たちの様々な実践がグループで行われいるということなのだろう。それぞれの子供が自由ながらも、しかし決して独りよがりに動くわけではない。既存の社会からの制約は受けないけれども、他の子供たちとの関係性という制約はそこにあって、その摩擦の中から、どこかに導かれていくが故に、最終的には散乱にならずに構築になるのだろうと。存在は、一人では存在ではなく、他者との関係性によって初めて存在になるということをまさに感じる。


クレオール

それは、人間が本来的に共同体の中で生きていく能力を秘めていることに起因しているのかもしれない。クレオール言語というものがあるが、第二世代によって構築されていく言語世界であって、この現象からも、人間本来的に備わっている何かがあると考えることが出来るだろう。そそれが社会を進化させていくというところもあるのかもしれない、うまく表現出来ないのだけれども。
そして、その現象を考えると、教えないで自然に獲得していくことに期待をかけているこのレッジョ・アプローチというのは理にかなっているようにも感じる。


まだまだ知りたい

正直言って、展示してあったテキストを読み切ることが出来なかったし、映像を見きることも出来なかった。ただ、そのエッセンスを強烈に感じたのは事実であり、このレッジョ・エミリアの教育スタイルには非常に強い興味を持った。それは、ただ自由に任せているというのではなくて、書くことや文字などにまで言及しているあたりには、非常に深い何かを感じた。
ということで、展示に関連する書籍が売っていたので、それを購入してみました。で、もう少し、このレッジョ・アプローチについて深く調べてみようと思っています。
いずれにせよ、刺激的な教育スタイルについて一度感じてみるのはいかがでしょうか。


関連リンク:
watari-um art museum exhibition
レッジョ・エミリア - Wikipedia
Comune di Reggio Emilia - Rete Civica Navig@RE
関連サーチ:
驚くべき学びの世界(AMAZON.co.jp)
驚くべき学びの世界(Google)
驚くべき学びの世界(Technorati.com)
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驚くべき学びの世界〜レッジョ・エミリアの幼児教育〜
発売日 : 2011-03-28 (単行本)
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