宇宙を織りなすものにて、次元についての考察



ブライアン・グリーン

ひも理論を軸にした宇宙論を分かりやすく紹介していた「エレガントな宇宙」の著者であり、本業の物理学の世界ではそのひも理論の権威であるというブライアン・グリーンの新著、「宇宙を織りなすもの」を読んでみた。上下巻に渡る大著。


次元とは

この書籍に一貫しているテーマは、次元とは何かということ。この次元にたいする解釈の変遷と宇宙論の変遷を絡めながら、とてもイメージしにくい難解な物理学と宇宙論の世界を分かりやすい表現とわかりやすい(そして、時に日本人にはわかりにくいかもしれないシンプソンズなどを例えとして利用した)説明した著書。
軸として次元を持ち出したところが、この著書とこの著者のさすがというところ。この軸があることによって、宇宙論がとても議論しやすくなっている。


おさらい

上下巻に分かれている作品のうち、大きく分けると、上巻は現在までに物理学が明らかにしてきた宇宙の解釈のおさらいで、下巻は現在まだ確立はしてはいないものの興味深い理論を紹介するという感じ。
そのおさらいの部分がまずもって、秀逸というのか、とても分かりやすい。ニュートン力学から相対性理論への転換、マクスウェルの電磁気学から量子理論への展開。これらの議論を交わしながら、空間と時間の理解についてひもといていく。例えば、相対性理論では、加速度が重力と同等であるという発見に基づいて、さらに空間が重力でゆがめられていくとなり、空間の解釈が拡張されていった。また、さらにここに熱力学の法則が議論されることによって、エントロピーが増加し続けるという議論から、時間の矢がどちらを向いているのか、進み続けるしかないのか?ということを議論する。
このおさらいが、とても分かりやすく、今までなんとなく理解していた、それぞれの理論があくまで概念上のレベルとはいえ、繋がって理解できてくる。


宇宙の歴史

そして、上記の時間、空間といった次元の概念の理解と同時に、宇宙の歴史へも理解が深まっていく。ビッグバン宇宙、インフレーション宇宙への展開。そして、さらにその前とは何か?ここへの議論もまた、時間へと繋がる。エントロピーが増加方向は何処で決定されたのか。そして、そもそも宇宙はどこからうまれたのか?ミクロの世界である素粒子の世界から、広範な宇宙の世界へとその間を行き来しながら、次元への理解を深めていくことになる。


ひも理論

そして、登場するのがひも理論。偉大な発見でありながらも、同時には成立することのない、量子力学相対性理論。それを統合刷るかもしれないひも理論とはなにか。そして、そのひも理論から導き出される宇宙のイメージとは、そして、そこから見いだされる次元の概念とは。そう、ひも理論では、次元は、現在考えられている4次元ではなくて、11次元であると。さらには、その次元という座標系とはなにであるのかを議論しながら、現在の4次元の空間というのは、閉じ込められた空間であるとか、フォログラフィックな写像であるとか・・・
このあたりになると、現在確立している理論ではなくて、まだ提唱されているというレベルであるらしいのだけれども、もはや我々の日常生活からの想像をはるかに超えた世界のイメージが作りあげられつつあるというのがとても興味深い。


タイムマシン

そして、ここでもう一つ興味深い話が混じり込んでくることがタイムマシン。前述の用に時間の方向がどちらを向いているのかという議論がこの本で為されていて、その延長線上の議論としてタイムマシンの可能性についても言及されていて、これもまた興味深いところ。


論理展開

というところで、宇宙論を読むという楽しさがこの本には存分にあるのだけれども、それ以上にこの本の参考になるところは、論理展開。ストーリーテリングの論理深さもとてもすばらしいのだけれども、それと同時に、論理の証明に用いる手法が参考になる。それは、論理の積み上げから導き出されてくる理論が一方であって、他方には観測事実から導き出されてくる事実がある。これらが相互に補完し合いながら、そして、時には全く異なる視点からの理論からの同様な結論を導き出すことによって、真実を証明していく論法は、ある意味では、当然の論法であるのだけれども、参考にしなければならないそれであると思う。つまり、演繹的に思考もするし、帰納的にも思考するというそれ。これによって、机上だけの独りよがりにはならずに、他方では、見た物をそのまま理解するだけにも陥らないという、そして、各ピリオドで確実に事実確認を多重的に行うという。実際の世界では、時に時間に追われておろそかにしがちなそれをこういった本を読みながら再確認して、そして、自らを見つめ直すということもまた必要かもしれない。


特に上巻

ということで、とても面白い物理本。とくに、上巻は現在までの物理学の世界がとても良く理解出来て非常に面白い。科学書籍好きにはお薦めです。




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宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 上
発売元 : 草思社
発売日 : 2009-02-23 (単行本)
売上ランク : 38324 位 (AMAZON.co.jp)
¥ 2,310 在庫あり。
評価平均 : /8人
時間と空間っていつもは全く意識しないけど、この本で書かれているような物理の観点から考えると、考えれば考えるほど不思議。
古くて新しい問題
この本の上、下巻を私専門の解説者つきで読みました。へぇ〜こんなことまで考えているの〜夢の世界に生きているのかな。
上巻同様、非常に詰らない。
何度読み返しても飽きない分、長い間、重宝する本です。(笑)
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