中国現代美術家アイ・ウェイウェイ展を六本木森美術館にて



夏休み

夏休みになって、すると、普段はこてこてな現代美術をやっている美術館でも、比較的一般的にも分かりやすい展示に変えたりしてくるのだけれども、六本木森美術館は立地のおかげか、そのような事は特にしなくて、こんな時でも相変わらず鋭い現代美術の展示をやっている。
今回は、中国のアーティスト アイ・ウェイウェイで、最も身近なのは北京オリンピックのメインスタジアムである通称”鳥の巣”にも関わっていた人物。


Creative Commons

で、今回の展示のおまけ的な注目は、写真撮影が基本的なルールを守ればOKであるということ。また、ブログ公開等に関しては、クリエイティブ・コモンズのライセンス表示すればOKという具合になっているところ。ということで、それに従って、こちらに公開してみました。


伝統の現代

では、作品。作品全体を通して共通しているのは、伝統と現代の併走というところで、このあたりは現代中国を象徴しているようでもある。最終的な作品の形態としては、ミニマルでそれだけでは何を示しているのかが解読の難しいコンセプチュアルな作品ばかり。だけれども、それぞれの作品が、伝統工芸の技術によって、もしくは、素材として古くからある物を利用して作られている。伝統をただ否定して、全く異なる現代を持ってくるのではなくて、ある意味では、伝統を踏み台にして、現代を対置してみせているところが、なんとも力強い。例えば、古来からの壺に現代的なペインティングをした作品などは、そのあたりを分かりやすく表現している。


中国

そして、ことのほか、中国を強く意識させる作品が多い。それは、上記の伝統工芸を利用しているからというところもあるし、一方でお茶の葉を使って、形状のみならず臭いも含めて中国を印象づける作品があるということもある。さらに、それだけではなくて、中国の全土の形状を表した作品がいくつかあることも象徴的。さらにこれらの中国はいずれも、寄せ木細工や木々のくみ上げによってできあがっているあたりが、さらに中国を象徴している。


批判だけではない

そして、それらに力強さを感じるのは、そのように中国の過去と現代を冷静に眺めていて、皮肉的に批判しているのではなくて、それがそうある姿をただ簡単に晒す一方で、そして、伝統を軽く否定してみせているようで、しかし、いずれの作品もそれ以上の解答を示しているのが、この作家の並々ならぬところ。アンデパンダンを否定するわけではないが、時に伝統を否定しようとするときには、過激な手法によって、見せしめのように行う場合が多いが、そうではなくて、むしろ、解体して再構築してみせているところが良くも悪くもこの作家が力強く、そして、実践的であると感じさせるところ。そう、いろいろな含みを持ちながら、いずれの作品もミニマルにまとめて見せている一方で、そこに含ませている意味がとても分かりやすくにじみ出しているところ。


力強さ

ここには、この作家の、そして、現代中国の力強さをまざまざと感じさせられてしまう。時に、理論を込めて、冷徹に否定してみせる姿が孤高ですばらしい姿ではあるのだけれども、ここにあるのは、そうではなくて、何が何でも突き進むということ。ここに今ある現在の現実の善悪を全て呑み込んだ上で、最後には、この現実をさらに先に進めていく解答を提示せしめているところ。この力強さに、私自身はこの展示を通して圧倒され続けだった。


現実

そう、理想を掲げることも必要だろうし、実利をすてる姿が潔いのかもしれない。現実に引っ張られるのは妥協であるのかもしれないし、時には悪なのかもしれない。ただ、それらの様々な側面の善悪を認識した上で現実に対処していくことが、しかし、現代の現実を生きている我々には、特にこの高速・大量・多角時代に生きる我々に、真に求められている事であるようにも思う。
現代美術という非常にわかりにくいといわれる作品をとおして、こういった現実的な問題提議と解答提示を行っているこのアイ・ウェイウェイという人はすごいなと、そんな事を思った展示でした。


展覧会本

で、私、とても気に入った展示の場合には、必ず展覧会の本を買って帰ることにしているのですが、今回の展示もとても気に入ったので、購入しました。
その展覧会本の今回の特徴は、CD-ROM付きってところ。彼の携わった建築の写真やCG、アイデア段階のスケッチなどなどを見ることが出来て、なんとなくお得な気分でした。
また、この建築関連のものについては、会場にて、23種類の絵はがき風の紹介ペーパーがあって、そのうちの1枚は持って帰ることが出来て、これもまた、なんとなくお得な気分でした。


お薦めです

夏休みということもあり、子連れや外国の方など様々な人が見に来ていた展示。ということで、ここまで、これほどだらだらと書きながらこう書くのはなんですが、とりあえず、現代美術だとか考えずに見に行かれてはいかがでしょうか。


小泉明郎

あと、MAMプロジェクト2009として、小泉明郎という人のビデオ作品が二点展示されていました。感情に訴えるようなメロドラマな展開アイロニカルに処理して面白みを出そうという作品なのだと思うけれども、私自身の感想は中途半端なひねり具合でかえって悪印象が残っただけでした。役作りの裏のところはむしろ隠しておくべきなところをあえてネタばらししたり、結果的にただの迷惑だろうと思わせるところもあり。そして、題材事態も凡庸。複雑な家庭事情の感情が浮き彫りにならず、ただの自暴自棄にもとれた。あくまで、個人的な感想ですが。




作家:アイ・ウェイウェイ
この写真は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止2.1 日本」ライセンスでライセンスされています。




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