川村記念美術館にて マーク・ロスコ に囲まれる



川村記念美術館

さて、千葉は佐倉駅から送迎バスにて20分程度という結構な奥地にある美術館、川村記念美術館詳細こちら)は、DIC株式会社(旧大日本インキ)の創業一族によるコレクションを主に展示する私設美術館で、こんな場所にあるというのも、研究所に隣接する土地に美術館が作られているからでもある。


マーク・ロスコ

そんな、川村記念美術館は、数多くの20世紀美術の有名どころを所蔵しているけれども、中でも、マーク・ロスコには力がはいっている模様で、マーク・ロスコルームを持つほど。このマーク・ロスコルームは、テート・モダン(詳細こちら)とここだけに世界で存在していて貴重な展示施設。
で、そんなこともあって、今回は、そのテート・モダンの協力もあり、シーグラム壁画と呼ばれる作品を集めての企画展示が開催中なので見に行ってみた、2009年6月7日まで。


四面

広い部屋の4面の壁に展示されている作品群、通称シーグラム壁画。赤茶色のベースに、マーク・ロスコ特有の四角が同系色だけれども微妙に違う様々な色で描かれている。ある意味、ただそれだけの作品。その四角も几帳面に塗られたそれではなくて、境界には十分に筆の跡を感じることの出来るそれら。若干オレンジの強い四角を持つ作品が中でも浮かび上がる。そう、その微妙な差異が、書く壁面に異なる印象を作りあげている。中央に置かれた椅子にゆっくりと座りながら、眺める、時にゆっくりと歩きながら、眺める、それらを。実際のところ、そこにある意味合いなど何もわからない。無意味な物だと誰かに断定されれば、それを否定しきる事は出来ないかもしれない。だけれども、そこに居て、それらをじっくりと眺めていたくなる。少なくとも、日常に感じる感情とは異なるところに行くことはできる。そして、こうやって展示され、眺められると、このような作品が、多くの人によって、それだけでも、この一見意味を持たないかのような作品の存在意義なのだと思う。ある価値を提示して、そして、それがこうやって存在場所を持っているということのその意味。


抽象

そして、ここに私自身が思うのは、人間の感覚というもの。反射的に多くを判断しているに違いない、人間は。恐らく、脳は、感覚器に受容された感覚のほとんどを処理することなく、その一部を過去のデータと照らし合わせることで、その場の判断をしているのだと思う。だから、時に錯覚を起こすし、時に先入観を持つし、時に経験が物を言う。だけれども、抽象にはそれが通じない。いや、既にその存在がある程度認知されている今となっては、全く通じないとは言えないだろうけれども、少なくとも、通じにくい。これらのマーク・ロスコの作品もぱっと見ても、何も頭に浮かばない。それどころか、記憶に残らないが故に、何度見ても、その全体像を把握しきれない。そう、この単純に見える形態を前にして、その人間の感覚の限界を思わず感じてしまう。そして、きっと依然として何度も凝視して、そして、脳が新鮮な何かを感じるのだと思う。そこにある、抽象の意義。


往復書簡

晩年、マーク・ロスコルームを作るために精力を費やしたことを感じさせる往復書簡なども同時に展示されていて、これらも興味深いところだった。そして、結局その実現を見ることなく自殺してしまうのだけれども。


常設展

で、このマーク・ロスコの特別展が目玉展示であるのは間違い無いのだけれども、それ以外にも、川村記念美術館は、20世紀現代美術の代表的な作品が常設展示されているので、こちらもなかなかすばらしい展示で、現在は、こちらに一部まとめたような作家の作品が展示されている。
ピカソシャガールマティスに始まり、マレーヴィッチ、カンディンスキーときてマックス・エルンストマン・レイから箱作品で知られるジョゼフ・コーネル、でさらに、ジャクソン・ポロック、サム・フランシスに加えて、フランク・ステラの作品群が大量に展示されている。特にこの抽象画作品の充実ぶりは抽象画好きには溜まらない。
特に、フランク・ステラの大きな造形作品が圧巻だった。


抽象画好き

ということで、抽象画好きにはどうにも溜まらないほどの展示内容なので、抽象画を愛する人は、これは見逃せない展示で、ちょっと行きにくいかもしれないけれども、それを乗り越えていくだけの価値は十分にありです。


ちなみに

ちなみに、美術館の周りも散策道があったり綺麗に整備された池があったりするので、都会にある美術館とは違って、自然を感じることも可能。
抽象画で新鮮になった脳を、自然の中でさらに新鮮にするというすばらしい体験も可能なので、特にこのいい季節には何かとお薦めです。

関連リンク:
SEUNZE.com -> dzd12061 -> 開催中の展覧会 | 川村記念美術館 -> 詳細情報
開催中の展覧会 | 川村記念美術館
今見られるコレクション | 川村記念美術館
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MARK ROTHKO
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発売日 : 2009-03 (大型本)
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