六本木森美術館にて、変容する空間を味わう「万華鏡の視覚」



森美術館

かつての話題性からはすっかり落ち着き払いすぎて、あの人の作ったあのキャラクターもすっかり虚しい感じになってしまっている六本木ヒルズですが、しかし、森美術館のがんばりはすばらしくて、あの一等地にて、一般人受けしない現代美術を、しかし、これでもかと展開し続けてくれます。まぁ、これ逆に六本木ヒルズだから、黙っていても、勘違いした観客が見に来てくれるから成り立つという考え方もあるのかもしれないけれども。


万華鏡の視覚

で、現在開催中で、2009年7月5日まで開催されているのが、「万華鏡の視覚」と題された展示。これが、まさに現代美術という展示。
絵画や彫刻と言った伝統的なメディアによる作品はあまりなくて、空間全体を光や色彩や映像等々で彩るいわゆるメディアアート的な印象も強いインスタレーション作品がほとんど。


タイトル通り

そのタイトルが全てを象徴していて、きらびやかさの中に空間感覚(日常感覚)からの解放が促される作品展示というのか、異空間を感じる作品となっている。
例えば、展覧会パンフを飾っている作品などは、光と鏡によって構成される空間を通り抜けるという作品で、電球の点灯タイミングと鏡の反射が作り出す空間は、そもそもの空間感覚を変容させるような作品でもある。その他には、原美術館でも展示を行っているジム・ランビーの作品が、ここでも、ある一角の床一面がテーピングによるストライプで彩られていて、異空間を生み出す。その他にも、ミラーボールを複数閉空間に展示した作品であるとか、オラファー・エリアソン、カールステン・ニコライといった作家の作品など、メディアアート系の展示で親しみのある作品も展示されている。


感覚と認識

異空間
このあたりの異空間な作品に対して、既存の感覚から解放するというような、この文頭に私自身が使った言葉は、あまりにも言葉足らずのイメージワードにすぎなくて、この感覚の解放を感じるには、感覚で感じるだけではダメなのだと思う。恐らく感覚で感じるだけでは、それはただ不思議だったで終わってしまうだろう。これらの作品は、認識へのアプローチとして捉えるべきなのだと思う。
19世紀から20世紀美術
美術を遡ってみると、19世紀から20世紀美術への展開にかけて、宗教的な意味をも含んだ精神的な意味合いをもつ作品から、より感覚へのアプローチや深層心理へのアプローチ、そこには言えないけれども、ある世界へのアプローチへと変化を辿っていき、20世紀美術が大々的な存在感を示すまでに至ったのだと思う。
20世紀から21世紀美術
これがさらに、20世紀から21世紀美術へのメディアアートなどにもよる展開は、この心理や感覚の世界からさらに踏み込んで、認識とは何かという次元に訴えているのだと思う(20世紀美術にもすでにその片鱗はあるのだと思うけれど)。
認識
そういう意味では、ここに展示されている異空間は、ただその異空間を感じると言うよりは、それを積極的に認識する必要があるのではないかと思っている。
感じるのではなくて、認識するというのは、ただその異空間を味わうのではなくて、その異空間の異空間性が何かということを捉えるという意味合いであって、つまりは受動的に感覚を解放するのではなくて、能動的に感覚を解放するというところ。一度認識をした上で感じるというべきかもしれない。
立ち止まる
抽象的な議論すぎてでは一体どう振る舞うべきなのかと。それは、立ち止まるという事だと思う。瞬間的に入ってくる情報だけで感覚を停止させないということ。例えば、強烈な光があれば、その光を一瞬認識してまぶしいという感覚が生成される。そこで終われば、まぶしいだけなのだと思う。だけれども、そのまぶしい感覚に対する反射的な自身の行動であるとか、その次の瞬間に視覚が陥る状態、このあたりのことを認識して再度感覚を解放するのかどうか、そこが重要なのではないかと。つまり、それが感じながら認識し、そして感じ直すという鑑賞法であると。


とはいえ

とはいろいろとややこしいことを書いては見た物の、とりあえずは、なかなか楽しい展示なので、観光ついでにでも楽しむというスタンスでも十分に満喫できるとは思います。まぁ、折角見るのなら、ちょっと一ひねりして鑑賞するとさらに面白みが増すのではと思いますが。


ティッセン・ボルネミッサ現代美術財団

ちなみに、この展示は、ウィーンのティッセン・ボルネミッサ現代美術財団というところと協働しての開催ということらしい。


関連リンク:
SEUNZE.com -> 地図と予定とウェッブサイト -> 緯度経度:35.6600857593283,139.73030090332
MORI ART MUSEUM
Thyssen-Bornemisza Art Contemporary
関連サーチ:
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