オペラシティ:伊東豊雄 建築|新しいリアル



1.2年ほど前
確か、2年ほど前、気鋭の現代美術館の一つである熊本市立美術館にて、館長と伊東豊雄氏とあと東京近代美術館の学芸員(記憶定かではない)のトークセッションなるものが開催されていた。私も、たまたま熊本にいて、そして、たまたま寄ったらやっていたのでいろいろと面白い話しを聴けたことを記憶している。


2.それをベースとして
そのときに、始めて伊東豊雄という建築家を知った。私が認知して情報に目が付くようになっただけなのかもしれないが、その後、加速度的に氏の知名度があがったような気がする。一般的な露出度という意味では、表参道のTod'sビルが有名だろう。
その伊東豊雄の建築作品を紹介する展示がオペラシティアートギャラリーにて開催中で2006/12/24まで。詳細はこちら
CAMKでは、今回も数々紹介されている気泡のような構造の建築物や、画一的な格子構造から解放されていき、従来の柱、壁、床、天井という四角四面の構造から離れていく様子が紹介されていてとても興味深かったのだが、今回は、その結果として実際に建設されたものを中心に紹介していてさらに面白い展示であった。


3.その気泡構造
残念ながらゲントのコンサートホールではコンペに負けてしまったその気泡構造の曲線だらけの建築がどうやら台中メトロポリタン・オペラハウスで実現する。まず一発目の展示は、その概略を示すポスターとコンピュータグラフィックを中心とした映像と、そして、模型。この構造、見れば見るほど不思議でかつ面白い。構造的には、全てが空間であってアーチで下から上まで繋がっている壁が柱にもなっていて、支持されている。中空とはいえ、一周した円に近い形状を持つから、構造的に安定していると言うことなのだろうか。コンピュータでの構造計算で最終形状が決定されているのだから大丈夫なのだろうが、特に地震時の大きな層せん断荷重をこの構造は何処で吸収するのだろうかと、台湾は日本同様自身が多い、想像が追いつかない、それとも、この中空円が柱よりも実は強度を持つのかもしれないが。


4.曲面
曲面だらけの気泡構造がある意味到達点で、その前段階として、曲面構造を持つ建築物が多く作られている。施工時のコンクリート打設用支補工の一部が展示されているが、その曲面ぶりは驚く。そして、靴を脱いで入る展示場では、床自体が曲面構造になっていて、壁には4建築物の図面、そして、建築物の模型、さらに、Tod'sビルの支補工が展示されている。靴を脱いで、実際に曲面を歩くとその曲面が見た目以上に急で、曲面の実感を強く感じさせてくれる。それから、模型の横には彫り込みなった椅子のような場所があって、座ってのぞき込めるというのも展示として面白い。
しかし、この曲面はデザイン以上にその工事のほうの大変さが身にしみる。それから、Tod'sビルの壁のような非対象性の柱にしても。全てをカスタムで、別のものを作らなければならないし、されらにその形状が繊細とくると、一般の構造物の数倍の労力がかかるように思う。当然精度を失うわけにも行かないだろうし。となると、コスト的にもなんだか大変そうと思うのはあまりもコスト中心主義にやられているバブル崩壊以降の荒波に呑み込まれすぎたサラリーマン的発想だろうか。コストを気にすると新しいものは生まれないとは思っていてもなお。あとは、精度の話しになるとこの曲面構造って、どの程度のロバスト性を持っているのだろうかと。四角四面構造だと、少々のことではバランスは崩れないだろうが、この構造はどうなのかと、とても知りたい疑問。ただ、一方でコンピュータの最適化計算をやると必ずといって良いほど生物的な曲線構造にたどり着くというのをよく見るので、この構造はかなり理にかなった構造なのかもしれない。四角四面構造だけに目を奪われすぎということか。たしかに、その目にたいていは新しいリアルだ。そう、そしてそこにはコンピュータというツールを手にすることによって実現可能になったという事実も隠れている。デジタルの威力は至る所で現れているのに、なおデジタルアレルギーな人は、それはつまり古びたリアル。


5.仙台メディアテーク
噂はよく耳にするが私は一度も訪れたことがないので実際の印象がわからないのが、仙台メディアテーク伊東豊雄設計事務所の歴史パネルによると、建設当時相当に物議を醸したらしいこの建築物も、とても見事。これも太い柱によって構造を保持するのではなく、細い柱の束が螺旋的に天井まで繋がり、柱の役割を果たす構造。細い柱なので透過性があり、ガラス張りの壁と相まって、空間の広さを演出している。で、この建物に関する展示の一部にこの柱の束の振動時の挙動が書いてあった。そこでふとこの非対称の構造は実は見事に共振を避ける役割になるのかもと、いや、そんなことはないか。


関連リンク:
Opera city art gallery
関連サーチ:
伊東 豊雄(Google)
伊東 豊雄(Wikipedia(JP))
伊東 豊雄(Technorati.jp)
伊東 豊雄(flickr)
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