トマス・ピンチョンのV.を読み終えたのだが



V.

着々と刊行が遅れ気味のトマス・ピンチョン全集ですが、私の読み進める方も着々と遅れており、ようやく、「V.」を読み終えました。
この作品は、トマス・ピンチョンのデビュー作に当たる作品で、今回の翻訳では薄めの上下巻にわたる作品。


謎の

トマス・ピンチョンの作品には,少なからず謎解きの要素があって、そして、その謎そのものを議論することが主題で、その謎がどう解かれたのかはよくわからないという展開がよくある。この作品は、表面的には謎解き。謎の「V.」を追いかけるハーバート・ステンシルが主人公。そして、もう一人何故この人がそれほど主人公的に扱われているのかがよくわからない、「V.」とは全く関連しそうにない人物ベニー・プロフェイン。この二人の行動がメインに描かれていく。


二人

もともと、トマス・ピンチョンは、二人というのが好きなのだろか?単純にいえば、メイソンとディクソンとか。ステンシルとプロフェインは、時に似ているようにも感じるが、全く関連性がないようにも感じる。この二人がそれぞれの世界でそれぞれに描かれながらも、時々同じ場面に登場するので、一体どちらの物語が今描かれているのか混乱し始めたりもする。
この二人は、いわば、謎の謀略渦巻く諜報世界を探求するステンシルと、ただ日常世界の比較的底辺側をうろうろするプロフェインという対比によって、表側の世界と裏側の世界を描き分けているということとも読み取れる。


女性

この「V.」はでは一体。様々な「V.」らしき人物が現れかける。その「V.」をイニシャルに持つ人物。しかし、誰なのかわからない、女性のようでもあるが。そもそも、何故に追い求めているのかさえもよくわからない。母親探求のようなものなのか、いや。


散乱していく

物語は、散乱していく。メインと思われる舞台はいくつかあるのだけれども、そのいくつかが平行して存在している。そして、時代が前後し、親子関係が表れると、名字側での表現が一体どちらのことを指し示しているのかもよくわからない。そして、話法さえも、その物語を一体だれが記述しているのかということさえも、はっきりせず、散乱し、集中して読み進める必要がある作品であるにもかかわらず、集中しきれない。


デビュー作

おそらく、これは、デビュー作であるが故なのかもしれない。表現として、多くの舞台を平行存在させてしまう描き方に、面白さを感じるのだけれども、どこかまだ、はまりきっていないというのか。
こういった描き方を最初に施してみた。そのことの方に、むしろこの作品があるのではとも感じた。


読み解けず

いや、つまるところ。私には、この作品をうまく読み解くことが出来なかったのだ。その表現手法の斬新さ意外には。何かあふれ出すものを捉えることが出来なかった。そのうち、また読み返す必要があるのかもしれない。


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