ちょっとした物語、「フォーチュン氏の楽園」を読んでみた
個性派セレクション
新人物往来社という、私自身はあまり聞き慣れない出版社が、近頃出版開始した外国文学シリーズに、「個性派セレクション」というのがある。このシリーズに何となく興味を持ったので、そのシリーズの第二巻、「フォーチュン氏の楽園」を読んでみた。
シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー
この作品の作家は、シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナーという人。私自身は、全くこの人のことは知らないのだけれども、1893年に生まれ、1978年に亡くなった英国の女性作家。で、今回紹介する「フォーチュン氏の楽園」は、1927年に最初に出版されている。この作家は、長編作品は多くは残していなくて、短編作品を多く残しているらしい。たぶん、日本ではそれほど知られていない作家だと思う。
宗教、孤島
この作品、ざっくりと言うと、以下のような感じ。銀行マンの生活を引退し宣教師となったフォーチョン氏が、その宣教師としてのさらなる仕事の全うとして、ある孤島へ向かい、布教活動をすることにしたところから始まる。そこで、布教活動をしながらも、その布教活動を通して、現地に暮らす人々の土着生活との対峙から、自らの信仰心について、再考する。そんな作品。
物語
私自身は、物語は文学のごく一要素にしか過ぎないと考えているので、物語主体の作品は、あまり読まないのだけれども、この作品は、物語重視の作品で、久しぶりにこういう物語主体の文学を読むのも悪くはないと感じた。というのも、この作品、物語ではあるのだけれども、よくできていて、勝って読みのような価値観が偏った世界をただ構築した作品とは一線を画す。
時代を先取り
そう感じさせる一要素は、時代を先取りしているところか。宣教師のある側面は、文化的に先住民を乗っ取るというところがあるともいえるかもしれない。ただし、ネタバレとして言うと、この宣教師は、むしろ、自らの信仰心が揺らぐことになる。このあたりの扱いは、近年の、ポストコロニアル(脱植民地)文学のとらえ方に非常に近しいところがあって、そういった要素を持つ作品を、1927年に書いていたというのは、非常に驚きである。
こういった物事のとらえ直しというのは、文学の機能として非常に重要なものの一つだと思う。そういう意味では、この作品いい読み物だと思う。
気軽に
というところで、語られる物語を順次と読んでいけば、十分に内容を理解できるし、ストーリーテリングとしても悪くないので、簡単に読み切ることが出来る作品です。ということで、ちょっと軽い読み物をお探しの方には、この作品、おすすめです。関連リンク:
歴史に学び、時代を読み解く。歴史総合出版:新人物往来社関連サーチ:
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