レーモン・クノーの超絶名作「はまむぎ」を読んだ



はまむぎ

レーモン・クノーは実験的な文学者としてよく知られる作家。その処女作にして代表作である名作「はまむぎ」を読んだ。


構成

私個人の意見だけれども、文学というのは、単に物語を追いかけて読み理解するというだけではなくて、その作品全体にある構成をも理解分析しながら、構成が意図する意味と物語そのものに意図されている意味とを輻輳的に立体的に読み解いていくことに面白さがあるのだと思っている。


循環

この作品は、まさにその構成と物語を堪能することのできる素晴らしい作品である。まずは、全体であるけれども、いきなりネタバレだが、最初の文章と最後の文章が同じ文章が使われている。このことによって、物語の循環が意図されていることがわかる。また、この循環だけれども、当初抽象的に始まった物語が徐々に、具体性を増しながら進むものの、最終的には情景は部分的なものへと簡略化されていき、登場人物も減少していく。そして、再度抽象度をました状態で終わり、そして、つまり、始まるという構成がそこには見て取れる。


章ごとに

そして、各章の最後の説は、イタリックで書かれており、また、その内容も、次の章へとダイレクトにつないでいくというよりは、章の意味合いの転換を意図しているようにも、また、その章を象徴的に描いているようにも読み取れる。ここにもまた、作品全体の構成を意図させる表現が見て取れる。


行き来

そして、物語そのものも、節ごとにまるで行き来するようであり、まったく関係ない物語かとさえ思われるところに、以前に出てきた登場人物や場面が言及されて、そして、それらはつながった物語であることにようやく気付かされる。それは、物語を過去から紡いでいくというよりは、時間を行き来しながら、パズルのピースがランダムにはめられていくかのように、全体像が明らかになっていく。


そして

しかし、この構成も後半になるとまた大きく転換する。財産を狙う争奪戦のような物語が続いていったかっと思えば、そのあとには戦争が発生し、そして、その戦争でのそれぞれの登場人物の立場がまったく異なる立場として、戦争ではふるまっている。また、時間の過ぎ去る速度も圧倒的に早くなっていく。
このあたりには、この小説が書かれた時代のファシズムの影というものも、関連しているようにも思える。


淡々とした

文体は全体を通して淡々としている。そして、何気ないけど何かが仕込まれているようなふんわりとした世界がずっと描かれ続けている。
しかし、その背後には構成も含めて、関連しあう立体的で矛盾とも表現できないような入り組んだ世界が広がっていて、それは、この世の中の表層と背景の関係性を見事に描き出しているともとらえることができる。


傑作

というところで、個人的にはこれは20世紀文学を代表するべき超絶傑作と呼ばないではいられない。


蛇足

というところで、そういった文章の構造と物語の楽しさを描いてみたこちらもどうぞ。


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