ますます充実する Roine 新バンド Agents of Mercy の新作

Agents of Mercy

現代プログレの代表的なバンド Flower Kings のほうは、めっきり活動が止まってしまっているのだけれども、しかし、そのメンバーによるプロジェクトバンドは、鋭意活動中。
そんな、Flower Kings の中心人物、Roine Stolt が最近力を入れているのが、今回紹介するバンド、Agents of Mercy。その2枚目のスタディオアルバム、Dramarama がリリースされたので、早速聴いてみた。

ジャケット

まず目を引くのが、オリエンタルでもあり、中世的でもあるジャケット。非常に精緻に描かれた摩訶不思議な世界観は、なかなか印象的。
このジャケット見るだけでも、この気合いの入れ方は、ただのサイドプロジェクトではないというところを感じさせもする。

メンバー

バンドメンバーは、Roine Stolt は当然として、あとはこのバンドのもう一つの顔と言うべき特徴的な粘着系ボイスのボーカル Nad Sylvan。そして、Roine の作品では欠かせない存在でもある、ベース、Jonas Reingold と、キーボディスト Lalle Larsson。ドラムが、Walle Wahigren。
なので、バンドメンバー的には、十分すぎる豪華な布陣。

気合い十分

で、アルバムの方は、気合い満点のジャケットそのままに、気合い満点の作品。Roine らしい、ユートピア思想な歌詞を持つファンタジックな楽曲は、Nad Sylvan の味わいのあるボーカルによって、とても柔らかい平和のイメージをより強く描き出している。
Nad Sylvan のボーカル表現に重きがあることもあって、インストは比較的少なめ。このボーカルとバンド演奏によって、童話のようなファンタジックな世界が描き出されている。バンドメンバーが充実していることもあって、音は非常に華やか。装飾的な要素が多く入り込んできているので、明るい雰囲気の楽曲をさらに装飾豊かに音色豊かに演出する。この豊かな装飾のサウンドが、Roine のバンドの特徴でもあると思う。全体的に高揚感に満ちていて、聴いているだけでも、幸せになるようなそんな作品。

楽曲

楽曲は、Roine が中心となって書いていて、一部ボーカルの Nad Sylvan も書いている。Roine の楽曲は、やはり、Flower Kings な色合いを維持している一方で、Sylvan による楽曲の方は、プログレ色が薄めのフォークロックベース。それなおかげで、アルバムの雰囲気も変化するので、このあたりも、アルバムのおもしろさを広げている。
ちなみに、長い曲でも10分に満たないので、どちらかというと小作品集。

構築よりも表現力

Flower Kings との差異でいうと、ベースにあるユートピア思想なファンタジックロックを装飾豊かに描くというところは、この Agents of Mercy でも共通なのだけれども、Flower Kings がよりストイックに構築美を追い求めていたのに対して、このバンドでは、より感情に訴えるような部分のやさしさの表現力に重きが置かれているような気がする。
そのあたりで、より力を抜いて聴くというスタイルが、こちらのバンドでの鑑賞側のスタイルになると思う。

おすすめ

というところなので、Flower Kings ファンにとっては、このアルバム Dramarama は納得の出来だと思うので、おすすめです。
あと、激しいバンドは結構ありながら、実のところ、こういったファンタジックロックを展開するバンドって少ない気もするので、やわらかさに包まれながらも、バンド演奏としての複雑さのおもしろさも併せ持つので、プリグレメタル系がそれほど好みではない、多くのプログレファンにはお勧めです。