フェアウェル さらば、哀しみのスパイという冷静時代のスパイ映画を見た



冷フェアウェル

かつて、米ソ冷戦のころ、ソ連は武器開発のためなどに必要な科学的な情報の多くを西側に対するスパイ活動によって、得ていたという。その共産主義体制に疑問をもつKGB職員、コードネーム「フェアウェル」は、逆にそのソ連の情報を西側へ流すことで、共産主義体制の崩壊をはかった人物。その「フェアウェル」を中心としたスパイ活動を実話に基づき映画化した作品が、「フェアウェル さらば、哀しみのスパイ」。
現在、渋谷のシネマライズで上映中なので、早速見てきた。





エミール・クストリッツァ

ちなみに、この主人公「フェアウェル」を演じているのは、アンダーグラウンドなどで知られる名監督、エミール・クストリッツァ。ロシア語とフランス語を操る名演技。


渋い

この映画、とても渋いです。当然ながら、スパイ映画といっても、ジェームズ・ボンド的なアクション満載なわけではなくて、情報の授受に対して、それを当局に知られてしまうと言う危険性に対する恐怖や、さらには、家族をもだましながら、さらには家族を危険な状況におとしめてしまうことの葛藤。勿論、母国に対する裏切りという葛藤。このあたりの緊張感が、じんわりと描かれていて、派手さはないものの、どっしりとした緊張感が充ち満ちた、非常に渋く面白い映画でした。


ロック

時代を反映しているのが、使われる音楽。ところどころ、ポピュラー音楽が使われていいて、QueenWe will Rock You が大々的に使われていたり、Pink Floyd の Run Like Hell が使われていたりと、ちょっとロック好きだとにやりとしてしまう。さらに、その音楽を聴くのに、ソニーウォークマンを使ったりしてもいる。


スパイ

そして、物事はさらに複雑になっていく。要するに、スパイ活動を行っていたのは、ソ連だけではなくて、フランスやアメリカも。そのことから、例えば、フランスとアメリカは同盟国だけれども、お互いに若干牽制しあっているし、異なるスパイをソ連で使っていたりする。
このあたりの内幕も描かれているので興味深いところ。一方で、このことが物事を複雑にしている。なので、ちょっとした場面も注意深く見る事をお勧めします。それが、つまり、あれを意味していたのか、と、最後になればなるほど、いろいろな事が繋がり始め、そして、一方で、そこにある現実の矛盾が暴露されていきます。


冷戦

近頃、20世紀に個人的に非常に興味があるのだけれども、この冷戦というのは、もっと歴史として分析と広報、教育されべきところではないかと思う。第一次、第二次大戦は、随分と広報されつつあると思うのだけれども(といってもまだ十分ではないところはあるだろうけど)、冷戦のことをまだ多くは振り返りきれていないように思う。
それは、冷戦という事だけあって、ここに描かれているように、多くは、スパイ戦であったことにもよるのだろう。しかし、例えば、北朝鮮の問題や、アフガン、イラク、イランの問題という現在の世界的な課題の背景には、冷戦当時の代理戦争のひずみがそのまま残存してしまったという要素が強くあるだろう。勿論、ベトナム戦争だって。それから、核爆弾の問題もこの冷戦の間に拡張されていったのだし、さらには、今もいくつかの場所は、東西両陣営の核実験の影響によって汚染されたまま放置されている。
今後平和をしっかりと希求していこうというならば、この冷戦当時の事実をもっと知らなければならないのではないかと思う。


すばらしい

ということで、ちょっと脱線しましたが、この作品、仕掛けにも満ちているので、映画としても非常にいいと思うし、その扱っているテーマとその扱い方も非常にいい。これは、すばらしい映画ですので、是非とも多くの人に見ていただきたいと思う。超お薦め。


ちなみに

ちなみに、この映画をきっかけに、このあたりの史実を知りたいと思って、書籍を調べてみると、「さらば、KGB―仏ソ情報戦争の内幕」というのがあるらしいのですが、どうやら、現在廃盤みたい。この映画を気に、再発していただきたい。


関連リンク:
映画『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』公式サイト
エミール・クストリッツァ - Wikipedia
CINEMA RISE MOVIE INFO.
関連サーチ:
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