リチャード・フラナガンのグールド魚類画帖という奇談



リチャード・フラナガン

リチャード・フラナガンは、私はこの作品で初めて知った作家で、当然読むのも初めて。オーストラリアは、タスマニア生まれの作家。現時点で日本語で読める作品は、今回紹介する「グールド魚類画帖」と「姿なきテロリスト」だけだと思う。


ポストコロニアル

この命名のしかたがどのようなものを差すのかあまり理解出来ていないのだけれども、ポストコロニアル的な作品と言われているのが、この「グールド魚類画帖」。ジャンルの切れ目が難しいけれども、マジックリアリズムな印象にも近い作風。


グールド

この作品は、グールドという人物が、様々な魚類を中心とした水棲生物のタイトルのもとに、その生物とやんわりと繋がりを持つような内容で各章を描き上げた作品。全体としては、タスマニア島における囚人の物語とともに島の運命が描かれている。


事実

ここに登場するグールドという人物は実在した人物らしい。ただし、この中の物語は、実存するグールド本人の伝記という分けではない。
また、この物語の中では、様々な残酷ともとれる様子が出てくるのだけれども、タスマニアの言い伝えなどを元にしているらしい。


感想

全体を読み通しての感想だけれども、一つ大きな印象は、その残酷性。囚人に対する扱いも乱暴であれば、原住民との関係性など様々なところで残酷な様子が平然と描かれる。このあたりの描き方が、恐らくポストコロニアルと呼ばれる所以であるのだと思う。
で、物語は、結構自由奔放に展開する。牢屋の中の様子からお抱え画家である様子から逃亡者である様子から。なので、これ何度か読み直さないとその中身はうまく掴み切れないのではと思う。
というか、私自身はまだ一回読み通しただけなのだけれども、今ひとつ全体を把握できていないというのが正直なところ。


趣向を凝らし

ただ、この掴み切れ無さが、この作品が文学的に非常に興味深い作品であることの裏返しでもあると思う。本国での出版では、文章の印刷に使う色彩を使い分けているというほどの凝りよう。物語全体も飛躍しながらしかし、趣向が凝らされている。例えば、この物語の書き手が誰なのかや、どこまでが見つけた文章を読んでいるのか、一方で実際に書いているのかなど。そして、最後には、その書き手であるはずの人物が、書き手ではあり得ない状態になり、そして、書き付けたメモ自体も消失してしまうという、安部公房箱男にあるようなメタ文学的なしかけもこの作品には埋め込まれている。


再読

というところなので、何とも、うまくこの書籍を表現仕切れないので、再読しなければな、と思っているところです。
ガルシア・マルケス莫言などのマジックリアリズム的な作品が好みの人であれば、この作品も楽しめるのではと思う。さらに、それらの作家とは、やはり違う味わいがあるので、それはそれで楽しむべきポイントであると思う。




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発売元 : 白水社
発売日 : 2005-06-25 (単行本)
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