横浜トリエンナーレ TIME CREVASSE



ハマトリ、ヨコトリ

さて、ハマトリと呼ばれたり、時にヨコトリと呼ばれたりして、そのあたりの確定のしていなさ加減が、このイベントの浸透度を表しているような気がする横浜トリエンナーレ2008に会期ぎりぎりになって行ってみた。


会場

会場は、新港ピア、日本郵政海岸通倉庫、赤レンガ倉庫のメイン会場に加えて、大桟橋や三渓園ランドマークプラザ、運河パークがサブとして存在する。まぁ、新港ピアがその中でもメインであって、むしろ一般的な鑑賞者にとっては新港ピアのみでも十分だったのではという印象。
一応、サブタイトルが TIME CREVASSE であることだし、時間を意識したコンセプトの展示と言うことで、会場が散在しているのは、あえて鑑賞に時間がかかるようにしているというところもあるのかもしれない。
実際、私も朝一から行ったけれども、時間的に三渓園はさすがにあきらめるよりなく、他の会場も時間いっぱいかけてなんとか見切ったという感じ。チケットが二日間有効ということもあり、ゆっくりと、むしろリアルに流れる時間は意識しないで鑑賞してくださいということなのかもしれない。


TIME CREVASSE

では、そのサブタイトルあたりからこの展示を考えてみる。
全体について
まず、展示作品全体の傾向。平面絵画はほとんどなしと言って良くて、オブジェ、インスタレーション、ビデオおよび写真がほとんど。キュレーターの意図もあって、パフォーマンス的な作品も多数。
また、作品自体で言えば、必ずしも現在最新の展示というわけでもない。ONO YOKO の作品であるとか、Fischli & Weiss の作品であるとかは、特にそのコンセプトの源泉という意味ではかなり古い作品。このあたりも、時間に対する展事全体のコンセプトの現れなのかもしれない。
また、展示としては、大空間をある程度緩やかに区切られって個空間を作りだし、そこをそれぞれの作家が使用するという感じ。
コンセプト
こういった作品の形態になってくるとやはり、それぞの作品が何を表現しているのかというコンセプトの読み解きであったり感じ取りが重要になってくると思うのだけれども、はっきりいって、あれだけ大量の作品のコンセプトを読み解き理解するのは不可能。それぞれを何となく、面白い物だな-といって通り過ぎるのが関の山。特に写真撮影が可能な展示なので、鑑賞者側も記録として写真を撮ることや、その面白い被写体をどのように面白く撮るかということに必死になっている要素が強くて、コンセプトを感じるような空気ではない。(私自身はその対策としてカタログを買った。とりあえず脳と体に記録しておいて、あとでこれを見ながら各作品を反芻しながら鑑賞しようかなと思って。そんなことまで意識してカタログを作ってくれれば良かったのにとはおもうが。)
ビデオ
作品形態としては、相変わらずのビデオ作品、および時間変化する作品の散乱が、(ある程度は意図的でもあるのだと思うけれど)、目立つ。過去、別の展示についての時にこのブログでも書いたけれども、時間的多様性を表現するのに、ビデオを利用して垂れ流すのは、本末転倒であることをもっと批判するべきではないかと、やはり思う。今回は、なるべく映像作品も時間を取って楽しむように私自身努めてみたけれども、本当に映像でなければ表現出来なかったような作品があっただろうか?
時間
つまり、時間。サブタイトルとして、TIME CREVASSE を持ってきたこと自体、キュレーター側の問題意識としては正しいところにあったのだと思う。ただし、結果からすれば、その時間をまともに表現することに成功している作家は今のところまだ出てきていないというのが現実であると感じた。新旧古今東西から、様々な形態の作家作品を集めてきてそれを乗り越えようとした展示のようにも感じるのだけれども、いっそう CREVASSE を感じただけだった。それは、世界が時間軸も含めて広く多様であるという意味で、ではなくて、我々が時間というものの認識に対して、である。逆接的には、それを感じさせてくれた展示であったが故に、成功なのかもしれない。
サーカス
前回のサブタイトルが、アートサーカスであった事を思うと、結局テーマは今回も変わっていないとしか言いようがないと思う。かっこいい言葉とコンセプトで化粧しようと努力したけれども、むしろ、アートサーカスとして全てを割り切ってしまった前回の展示のコンセプトのほうが現在のアートシーンならび、こういった手法のイベントを表現するには適切なのかもしれない。
商業主義
カタログによると、アートの商業主義に反対して、それぞれの作品は後に残らないものがほとんどのようにしているということだが、それは何か違うのではないだろうか。商業主義を全て批判するなら、入場券も取るべきではないし、自発的に鑑賞者にお金を寄付してもらうべきだろう。いずれにせよ、商業からは離脱できないのは現実である。むしろ、後に残存しない作品であるのであれば、それは、そもそも作られる必要すら無かった作品とも言えるのではないのか。
問題意識
結局、何が問題意識なのかと言うところ。このサブタイトルであれば、やはり時間軸を持った世界の認識がテーマとなる問題ではないのだろうか?
であるのであれば、その時間をもっと強調する作品に絞り込むべきであったのではないのか。テーマが非常に大きいだけに、こじつければどんな作品も呑み込むことが出来る。そして、結局そちらに流れてしまったとしか言いようがない作品の氾濫ぶり。本当に時間であれば、ジョン・ケージのあの曲を一つだけ展示しておいた方が、むしろ明確であったようにも思う。
ただし作品はすばらしい
ということで、トリエンナーレ全体としては、今回もまた課題が多いと感じたのだけれども、寄せ集めただけ展示の良さもあって、一つ一つの作品に対しては、自分の好みの物であったりクオリティーの高いもの、新しい発見物ものは結構存在していた。むしろ、このサブタイトルを無視して、見本市的に考えれば、楽しい展示だったと思う。
本当はいろいろと書きたい展示も多かったのだけれでも、もう長くなりすぎているので今日はやめておく。
アートサーカス
だから、TIME CREVASSE ではなくて、アートサーカスなんだと思う。むしろ、これを永遠のテーマにすべきのように思う。
マーク
ちなみに、ポスターの緑地に金の三角は、はっきいっていけていない。スタッフがきているTシャツなんかもださすぎて記念という観点をもってしても買う気がしない。あのびらがあふれる街中も、寂れた商店街みたいに感じさせられた。あれはないだろ。


総括

ということで総じて言えば、ポスターといいコンセプトといいあえて力を入れたところは大空振りというように感じられた。
しかし、各作品はとても面白い物が多くて、何というのだろうか、テーマパーク的にはとても楽しめた展示だった。
なので、次回は大見得をきらないで、アートサーカスという感覚で続けてもらいたい。


開発ラッシュ横浜

しかし、横浜、本当に大丈夫なのかってぐらい依然として開発ラッシュ。あの海岸一帯も今も工事中で青写真が貼られていたけれども、こんなに投資していて大丈夫なのだろうか?神戸のあの財政破綻ぶりを目の当たりにしているだけに、かなり心配。まぁ、余談です。


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