ネットワークの現在:世界はどうつながりうるのか:ICC



1.最終回
初台のオペラシティ内にあるNTTインターコミュニケーション・センターICCにて、開催されていた連続シンポジウム「メディア・テクノロジーと生成する〈知〉」の最終回、「ネットワークの現在:世界はどうつながりうるのか」が、2007/6/23に開催された。今回は、中嶋謙互さん、馬場正尊さん、増田直紀さんの3人に、四方さん。


2.内容
いつもと同じように、3人それぞれのプレゼンのあと、ディスカッション。
2.1馬場正尊
馬場さんは建築家。東京R不動産という、ちょっと一癖在る物件を紹介する不動産サイトを運営している事などで知られている。話の内容は、その東京R不動産の運営を中心に、そのサイト運営の前から氏が実施していたペーパーメディアでの活動などを通して、感じたメディアについての話し。都市というあまりにもリアルな世界とwebというバーチャルな空間、そして、取引というある種リアルでありながら、貨幣というヴァーチャル介在物を介する商取引(不動産賃貸契約)を横断的に活動しているところの現場に近い感覚の話しが面白い。


東京R不動産
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2.2増田直紀
増田さんは、最近結構注目を浴びているネットワーク科学を研究する研究者。最近だと、スモールワールドと呼ばれて、大概の人間とは6次の隔たりで繋がっているという話しなどで、注目を浴びているネットワーク科学。そのネットワーク科学の概念と、モデル化の話しから、それを現実世界に如何に還元していくべきかというところの話し。スモールワールドというか、ネットワークで物事を捉えるというのは、私個人的にも興味を持っていて、書籍なども読んでみたが、学問的にはかなり抽象度が高く、非常に想像が難しい世界。


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2.3中嶋謙互
中嶋さんは、3Dバーチャルワールドを表現するソフトウェアの開発者(スーパークリエイター)。一方で、コンピュータの進化によって、脳とコンピュータが直結されていく未来の世界についての考察をしている。現在でのヴァーチャル世界というのは、あくまでも、標準パソコンのインターフェイスの向こう側に在るという感覚の強い物だけれども、脳と直結されるというところにあるイメージは、ヴァーチャルと現実の境界がさらに曖昧化する世界。そして、本当に人間とは、とか、身体とは、感覚とはという、一方で脳とは、という人間の根本存在まで言及しなければならない世界の話しで、とても面白い。
2.4ディスカッション
ディスカッションはかなり興味深かった。話しは、馬場さんの建築周りの話しから展開したのだけれども、まず、都市を扱うということで、圧倒的な現実を対象にしている馬場さんの活動に対して、それをモデルによる理論で捉えようとしている増田さんの学問的視点と、バーチャル世界という観点から見る中嶋さんという構図が、非常に面白い。で、都市はというか建築は過去から最も変化していないものという観点が面白くて、結局それは、建築というのは身体に依存しているという事に起因するのだと思う。それから、編集性の障壁の高さがヴァーチャルワールドとは雲泥の差があるというところ。このスピード感の差は興味深くて、もしかすると、ヴァーチャルワールドが都市を駆逐するかもしれないとさえ思わせる。つまり、変化を許容できない都市は、人々の興味の対象から外れて、人々はヴァーチャル側に圧倒的に流れる。そして、都市は、居住するという目的と流通させるという目的のみに落とし込まれて、娯楽空間から脱落していく可能性も在るのではとさえ。それぐらい、ヴァーチャルの自由度の高さには何か、もしかすると勝手な理想郷を描きたくなるという思いも思ってしまう。で、その身体との関連性に伴う人間存在というのは、中嶋さんが言及しているところで、このあたりをどう考えるかについては、やはりヴァーチャルの進化にともない、再考し再構成しなければならないところかもしれない。


3.共通性
この3回シリーズの「メディア・テクノロジーと生成する〈知〉」は、全体をまとめるととても興味深いし、得る物が多かった。まず、人間の存在についての再考が個人的に出来たという事。脳と身体の関連性というのは、例えば、ダンスという観点から身体に迫る矢内原美邦さんやアートからやってくる岡崎乾二郎さんの視点、それに対して、脳とバーチャルの世界から逆説的に問題提議する中嶋謙互さんの視点、デジタルデータベースの蓄積の前での人間存在の危機を語る石田英敬三の視点。このあたりから、人間の身体と脳が、思いの他分離しているという事を再認識できたし、その一方で、その人間が存在する都市空間については、現在のリアルな都市の中で個性を見いだそうとする馬場正尊さんの視点、それから、歴史の痕跡が残ってしまうという観点の中谷礼仁さんの視点などは、脳世界とは異なるマクロな物理法則に支配されて、新しい物事よりも既にそこに存在することが圧倒的に優位に立つその環境の中にある都市の存在が改めて浮かび上がってくる。そして、その複雑環境に見える世界を、統計的に特徴を抽出しようとする三中信宏さんだとか、ネットワークとして記述使用とする増田直紀さんの観点、一方で、細胞存在というところで捉える郡司ペギオ幸夫さんの観点、このあたりは世界の記述方法から、世界を記述し直す事で、あたらな視点が生まれてくるという学問の面白さがあるし、その批評力も感じた。


4.再記述
つまり、認識側の問題としては、身体という機関を通じて現実を解釈する脳があって、その向こう側にある種の世界が存在する。その世界は、人間社会の脳の共通認識としては、ある種の物理法則である程度までは性格に記述可能な世界が広がっている。lそれを、身体を通じて認識しながら暮らし、そして、その身体に適切かつ認識している物理法則になじむように形成された都市があり建築があり、そこに存在する人間がいる。近年は、コンピュータというヴァーチャル社会が生み出されて、その身体と粗結合の状態にある世界で、テキストというとても簡素なインターフェイス越しに様々な情報が伝達され世界が形成される世界に変化しつつある。そしてさらに、そのテキストという介在物さえも不要とする脳社会への近づきがあるのかもしれない。


5.面白い共通性
それとは、別にやっぱり面白いと感じるのは、全く違うパネリストで在りながら、2回目にも3回目に言及されたクリストファー・アレキザンダー。まぁ、都市の話しになると言及度が高い人物というところはあるけれど、こう、異文化間でありながら、ある種の共通性をそれぞれの個人が持っていると言うところの面白さがあって、こういう微妙に重なり合う興味世界は、きっと分類困難な世界の中で他文化にも興味を持ちながら自己の世界を深めていくタイプの人が今回のパネリストの特徴なのかなとも思ってみたりすす。まぁ、そうであるからこそ、こういう場に参加するのだというもいえるけれど。


関連リンク:
ICC Online | ICC開館10周年記念セッション・シリーズ Vol.2 連続シンポジウム「メディア・テクノロジーと生成する〈知〉」
dLINKbRING.Art.NTTインターコミュニケーション・センターICC
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