ダリ回顧展:上野の森美術館



1.100年
さて、つい最近劇作家・作家サミュエル・ベケットが今年生誕百年で云々という記事(例えばこちら)を書きましたが、画家のサルバドール・ダリはその2歳年上で、1904年生まれ。なので、正確には生誕102年だけれども、今回のダリ回顧展は生誕百年記念。


2.うますぎる
とりあえず、思ったことは、あまりにもうますぎるということ。例えば、よく出てきて有名な溶けている時計にしても、現実にそのようなものは存在しないにもかかわらず、それっぽく描くって、並大抵の技術ではないと思う、見る方からすると、その技よりもそのようなものを描いていることに驚きを感じるのではあるが。で、さらに生で見て驚かされるのは、例えば、そのような時計にしても、ちゃんと針の影が描かれていたりするから驚き。


3.広大な空間から
展示が年代順になっていたかどうかまで、ちゃんとチェックしていなかったけれど、一階に展示されていた作品は、かなり広大な空間を描いて、画面の一部にダリ特有の不思議な情景が描かれている構成のものが多かった。で、その広大な空間にぽつんと人がいたり、トリが飛んでいたり。そう、それらが見つけられないようにしてでもいるかのようにそっと描かれている。そして、あとは、とてもきれいなグラデーションの空であったり、そして、見事すぎる岩などが配置されている。あとは、すっと伸びた影。ダリというとどちらかというと、特異な造形ばかりがイメージに浮かんでしまうけれど、広大な空間に細かく描かれた様々なものというのは改めてみるとちょっと意外な発見のような印象だった。


4.有名どころ
2階は比較的有名どころの作品がいくつか。ただ、有名な作品が多すぎることもあってか、有名作品の中でも今回は展示されていないものも多くあった。2階にある作品は、だまし絵的な要素を持つものが多くあるというか、だまし絵的にすることで隠喩しているかのような作品群。そして、アンダルシアの犬の放映。


5.つまりうますぎる
結構感じたのは、つまりダリは絵がうますぎると言うこと。人が思いも寄らないものをさもそれらしく描く、そして、人々を驚かせてやろうと、そんな印象を強くうけた。シュールリアリズムって、どこか哲学的意志とのつながりが指摘されることも多いけれど、今回の展示から感じたのは、ダリの制作意図としては、まず、見る人を驚かせるようなものを描いてやろう、というのが最初にあって、哲学的意図というか、作品に込める意志というかは、それほど強くないのではないかと。ただ、思い描いたことを何でも描く技術があるだけにそれをそのまま描いていると、いつしか、フロイト的解釈に結びついてしまったのだろうと、そんなことを漸く認識できた展覧会であった。一方で、そういった思いも寄らぬ結びつきによって、さらにムーブメントが拡大していくというところは、これはまさインターフェイスによる接続であり、芸術と哲学とのそれぞれの面白さでもあると思う。


関連リンク:
VirtualDali.com
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ダリ回顧展 上野の森美術館
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