東京オペラシティにて、ホンマタカシニュー・ドキュメンタリー展をみてきた

ホンマタカシ

正直言って、ホンマタカシさんという人物を私自身はよく知らなくて、ファッション誌などでも活躍している有名なカメラマンらしい。そんなホンマタカシさんの個展が、ニュー・ドキュメンタリーというタイトルの元、東京はオペラシティアートギャラリーにて開催されているので行ってみた。2011年6月26日まで。

展示

テーマをもったシリーズものの作品群が5つと、過去の雑誌に載った写真を冊子にしたものを積み上げた展示、および、映像作品からなる展示で構成された個展。

記憶

この展示を通して感じたのは、これらの作品に一貫するテーマがあって、それは、記憶というものではないかということ。最初の "Tokyo ＆ My Daughter" という展示では、東京という大都市に対して、少女という全く次元感の違うものを並列に並べるとともに、さらに、その少女はそのタイトルとは異なり、作者の娘であるわけでもなく、さらには、写真によっては作者によって撮影されたものでもないというその展示が指し示す記憶の微妙さ。つまり、少女の記録写真であれば、自分の記憶にリンクする写真であるのだけれども、そこにあるのは、全く記憶とはリンクしないそれ。そして、その少女とともに映り込む様々なものが指し示す場所と時間のずれが感じられて、さらに、それが現代東京都のずれも起こしている。そして、記憶を混乱させるようでもある。
また、イタリアの街の未亡人の写真も、その人々と並列されるものや街は、彼女たちの記憶でもある。

さらに

さらに言えば、いろいろな街のマクドナルドを撮影した "M"や、ハイウェイ周辺の動物たちの痕跡を捕らえた"Together: Wildlife Corridors in Los Angeles"という作品は、都市というものが破壊していく記憶と、自然という存在そのものが時間をかけて形成されてそこにあるということこそが記憶であると指摘しているようでもある。自然は、そこにそこ特有のものを作り出すのだけれども、都市はむしろ画一化をめざす。固有性とは、つまり歴史であり記憶である。

痕跡、アーカイブ

自身の作品を再編集したかのような "re-construction" は、アーカイブすることによる記憶の再生であろうし、"Trails" は、そこに生物が残した痕跡であり、痕跡とはつまり、大地に刻まれた記憶であると。

陰はそこにはなく

しかし、記憶し続けることが必ずしもそれだけを指摘すべきものなのだろうか。むしろ、記憶出来ると言うことは、その記憶には、平穏で幸せなものが優越していたことの証に過ぎないのではないだろうか。未亡人たちにとっては、それはいい思い出だったのであれば、それを何の迷いもなく、いやむしろ喜びを持って提示するだろう。そして、しっかりと機能している都市、それが画一されていっているとしても、しかし、存在してる。そして、痕跡を残し続ける生物もまた、生き延びている。記憶があるということが意味する平和。それは平和ぼけているとそのことの優位性にすら気がつかない記憶。そう、抹消しないではいられない記憶というものもあるはずだ。そして、それらはひっそりと消えて行っている。だけれども、この展示空間にはそういった陰の記憶は現れてこない。この展示空間には、平和しかないように感じた。

塗り替え

そして、記憶というものは、時に強制的に塗り替えられる。為政者が変われば、歴史は書き換えられ、人々の記憶は教育によって強制されて、街は、作り替えられる。むしろ、それが弱肉強食の掟でもある。
むしろ、記憶は、そして、都市は、自然は、何度も作り替えられるものであって、永続するようなものではないのかもしれないとさえ思う。
しかし、そんなことは、この展示からは微塵も感じなかった。むしろ、平和だった。記憶が続くことが当たり前であって、それをさらにたんたんと紡ごうとしているかのようでもあった。

平和

だから、やっぱり、平和なんだなと感じた。この展示を通して、どこにも崩壊するようなあやうさは感じられなかった。何かのしっかりとした基礎の上に立ち続けたままに、何かを描いているように感じた。平和なんだと思う。いや、私のとらえ方があまりにも捻くれすぎているのだと思う。

Rogi073.Diary 2.0

東京オペラシティにて、ホンマタカシニュー・ドキュメンタリー展をみてきた

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平和

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