資生堂ギャラリー:Robin Rhode 展

1.概要
さて、銀座にある資生堂ギャラリーで、現在開催中(〜2006/7/30)のRobin Rhodeの個展にいってみた。個展としては日本初らしい。南アフリカ出身でベルリンが現在の拠点だそうだ。


2.作品
作品は、3種類のビデオ作品と2種類のパネルと2枚の絵。それと、壁に本人が書いた作品に、その作品の作成状況の映像。


3.作風
作風は、チョークなどによる落書き的絵にパフォーマンスを組み合わせたもの。パラパラ漫画をチョークの絵とパフォーマンスによって作成すると表現するとわかりやすいだろうか。場面変化をチョークの絵とその絵の前でのパフォーマンスによって、表現していく。(百聞は一見にしかずなので、資生堂ギャラリーのサイトで確認してみてください。)


4.面白い、だけではなく
まず見ての感想は単純に面白い。しかし、それはただ面白いだけではない。壁の絵という平面とパフォーマンスという立体、そして、その場面が静止でありながら、複数の場面の連結によって時間軸が加わりアニメーション的になるという構図は、次元の分離と融合となっていて、日常生活では完全に一体になっているそれらが、このように分離された後に再度若干のぎこちなさを残して接続されることで、そのぎこちなさが、見る人を捉えるし、見えなかったそれらの次元の存在を再認識させるものとなっている。


5.勝手な解釈
5.1もう一つの次元展開
壁の絵は当然場面の変化ごとに描き直しされることになる。ある場面のために描かれたものが、次の場面のために描き変えられる。勿論パフォーマンスもそれのために変化するが、パフォーマンスはやり直しが簡単である一方で、書き直すという行為はそれなりの時間を要する、たとえ、映像作品になれば数秒という単位であっても。先ほど、平面(壁の絵)と立体(パフォーマンス)と時間軸(アニメーション)という話題を上げたが、その制作過程を考えるとそこにはもう一つの時間軸とパフォーマンスがあり、先ほどのそれとは天地の関係で存在することになる。ここにも、また次元展開の面白さが隠れている。
5.2流れ行くもの
そして、このリライトという行為によって、まず、本来絵という作品が持つ永続性(絵として額に飾られてそのままずっと保管される)ということを否定する。そして、それだけではなく、このリライトという行為はここまでの展開でも何度か述べた時間軸を強烈に表現しているように思う。多くの人が指摘しているように、現代のもっとも特徴的なものは時間の短縮化である。古代では毎日の循環という時間軸が支配的であり、時代が進むという時間軸はほぼ無かったものが、現代では、毎日の循環よりも日々の進化・変化(特にIT系ではそれが激しい)という時間軸が支配的になっている。つまり繰り返しではなくて刷新が常に起こるという時間軸に支配されているというのが現代の大きな特徴なのだと思うが、その特徴をこのリライトとアニメーション化が見事に表現していると思えてならない。まさに存在と時間である。


6.まとめ
現物としては現れてから消えていき、若干のみ記憶に残るというメディアの特徴をうまく表現しながら、一方で、単純に面白い。同じ南アフリカ出身のアーティストWilliam Kentridgeの方法論に近しいものも感じさせるが、チョーク絵ということもあり、Keith Haringっぽい要素も感じる。なかなか良いのでお勧め。


7.補足
会場で売っているカタログを買うと、カタログの端に作品の写真がページごとに掲載されていて、お気づきの通り、パラパラ漫画として彼の作品を楽しめます。

関連リンク:
Shiseido Gallery
ARTTHROB Robin Rhode
関連サーチ:
Robin Rhode(Technorati.jp)
Robin Rhode(flickr)
Robin Rhode(del.icio.us)
Robin Rhode(Wikipedia(EN))
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