Marillion の新作 An Hour Before It's Dark は優しさに包まれて
Marillion
英国の秘宝 Marillion 80年代プログレを代表するバンド。
近年も定期的にアルバムの発表とライブ活動を行い、
孤高の存在として独自の活動を続ける。
そんな彼らの新作 An Hour Before It's Dark を聞いてみた。
クラウドファンディングの先駆け的な存在でもあり、
リリース前からアルバムの予約を初めて資金調達をして、
アルバム作成するスタイルは今回も継続されている。
ロックに
彼らの最近の作品は、単純にプログレ的と言う範疇を超えた、
映像的というのか、独特な音像を作り上げて、世界観を作ってきていた。
今回の作品は、少しその傾向からは変わっていて、よりロックに回帰している印象。
上記の音像的な彼らの世界観を描く音作りには変わりがないが、
曲構成自体はよりシンプルにロックに、ポップに、バラッドに、
感情がダイレクトに響く作品となっている。
構成
曲構成は少し複雑で、4つの組曲と2つの曲およびブリッジのような単曲一つ。
この構成の中で、上記のような様々なタイプのサウンドが組み込まれていて、
アルバムカバーのようなカラフルな世界が音でも描かれている。
Rothery ギターのキレは健在だし、Hogarth のボーカルも相変わらず渋くて気持ちいい。
さらに、このアルバムではコーラスも重厚に作られていて、ボーカル要素の重要度が増していて、
Hogarth の声による激しさとやさしさの緩急がうまく作られていて、カタルシスにつながる。
魅力的
今回の作品は、随所に優しさを感じる。
あえて、今まで作り上げてきた構築美のところを崩したことで、より感情的になり、
そこが、この優しさにつながっているように思う。
ある種の到達点にたどり着いたのではと思わせた前回の作品に対して、
今度はリラックスるすることで、さらなる境地にたどり着いたと言える。
やっぱり傑作
まぁ、私は重度のMarillionファンなので、フラットな意見じゃないかもですが、
やっぱり今回も傑作です。
比較的聞きやすいので、今までMarillionを聞いたことのない方にもおすすめ。
いまやサブスクで簡単に聞けるので是非トライください。
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熟練の味わい Fish によるラストアルバム Weltschmerz
Fish
初代Marillionのフロントマン FISH。
Marillion 脱退後は、ソロとしてのキャリアを築いている。
Weltschmerz を新たにリリースしたが、この作品が最後のアルバムとアナウンスされている。
2枚組の超大作。
らしく
ソロ以降の作品は、彼の味わい深いボーカルスタイルを軸にした、落ち着いた味わいの作品が多い。
Sunset Of Empire などは、ソロキャリアの中でも名作の一つである。
そのFish がラストアルバムと呼ぶだけのことはあり、Fish らしさが存分に詰まった作品となっている。
アップテンポなポップサウンドから、10分を超える長尺曲も3曲含まれ聴き応えがある。
優しさあふれる
彼のキャリアにおける名作バラッドの一つに、A Gentleman's Excuse Me があるが、
その作品に近しい触感の Garden of Remembrance は、とても優しい。
アルバム中盤(2枚めの1曲目)に置かれたこの曲によって、作品全体が引き締まっていて、
聴いていると、このスローバラッドに軽い緊張を感じながらも、
何か解き放たれるような、涙が溢れ出すような、緩和を感じる。
名作
Fish キャリアの中でも名作として語れる作品に仕上がっている。
ラストアルバムというサビさはあるが、その名に負けない素晴らしい作品です。
出来が良すぎて物足りない!? Mastodon の新作 Hushed & Grim
洗練された
サウンド的にはさらに、洗練されたという印象を持った。
さり気なく変拍子を差し込んでくるなど、複雑さをもたせながらも、
ヘヴィネスと疾走感を殺さずに、聴き心地の良さと複雑な面白さを両立。
Dream theater の手法を思わすような器用ささえ少し感じてします。
薄味
そんな楽曲の洗練度合いの一方で、Mastodonの持つなんというのか、
味のこさというのか、起伏の激しさというのか、そういう耳を奪われてしまう、
要素が薄まってしまったという印象もする。
ヘヴィーな曲の合間にポップなメロディが現れたり、荒々しいがコーラスが美しかったり、
みたいな、ミスマッチが結構面白かったのだけれども、
そんなヘンテコ感が薄まっているという感覚。
The Dear Hunter がはじめる新たな旅 The Indigo Child
The Dear Hunter
USのプログレメタル系バンド The Dear Hunter。
テイストは、Coheed and Cambria に似ていて、ポップなメロディーを持ちつつ、
一方でアルバムをまたぐ壮大なコンセプトを描く作品群を構築している。
Cycle8
そんな彼らが、リリースしたのが、The Indigo Child。
これは、どうやら、Cycle8と第された新たなるコンセプトのプロローグとの位置づけ。
なので、今後この作品を始動に、作品群が構築されていくと思われる。
The Indigo Child
全体は30分程度の作品で、いわばEPの扱いになる。
The Indigo Child と歌われる印象的なサビを作品内でも何度か登場させるなど、
EPとはいえコンセプチュアルな作品に仕上げられている。
作風であるが、ねじれたポップロックテイストな彼らのスタイルは踏襲されているものの、
エレクトロニカな音が多く投入されていてサウンドとしては近代的にアップデートされている。
上述した The Indigo Child のサビフレーズの心地よさと相まって、全体的に穏やかに心地よい。
一方で、タイトル曲意外は、映画のスコアのような位置づけである。
音的にも強く物語を感じるところがあり、もはや他に類のない独自の世界に彼らもたどり着いたと言える。
今後
今後のこの、Cycle8 ストーリーが非常に楽しみに感じるプロローグである。
Coheed and Cambria が好きな人はきっとこのバンドも気にいると思う。
Dream Theater AVFTTOTW 高みからの眺めはストレートにねじれていて
Dream Theater
言わずもがななプログレメタルの大御所 Dream Theater。
その新作、A View From the Top of the World がリリースされたので早速聞いてみた。
直球
いきなり、Dream Theater 然としたインストとからのスタートで、ここですでに傑作間違いなしな予感。
その後、全体的には、変化球をみせるというよりも、直球勝負。
Dream Theater らしい、複雑なインストと、美しいメロディーで構成されたサウンドが広がる。
ねじれていて
しかし、よく聞くとこれがとっても変則的な曲ばかりでも、もはや変拍子がどう組み合わさっているのかを
取ることも難しい楽曲ばかり。ただ、その難解さを感じさせない疾走感で演奏されていくので、
一瞬、非常にストレートなメタルサウンドにも聞こえるところは、むしろさすが。
とくに、その疾走感と変拍子を支える Mike Mangini のドラミングは今回のアルバムでは最も重要な要素ですね。
タイトル曲
そして、タトル局は、20分を超える大作。
全体的に、あえて王道を突き進むという意思を強く感じるアルバムですが、
そこに会えて、プログレらしい大曲を持ってくるあたりも、王道意識を感じますね。
アルバムタイトルにもなっているあたりからしても、意思を感じます。
メロディアスさを感じさせる、タイトルフレーズをうまくはさみながらも、
谷間もしっかり作る緩急で構成された作品。
しっかりと構成された良い楽曲だと思います。
力作
圧倒的なパンチ力だったり驚きのあるタイプの作品ではなく、
あくまで、Dream Theater らしさを存分に出し、自らの実力を証明する作品となっていますね。
私はここ数作の中でも良い作品だと感じました。
The Neal Morse Band 安定のクオリティ Innocence & Danger
The Neal Morse Band
現代プログレの重要人物、Neal Morse によるバンド The Neal Morse Band。
その新作、Innocence & Danger がリリースされたので聞いてみた。
なおメンバーは、いつもどおり、Neal Morse を中心に、ベースのRandy George、ドラムは、Mike Portnoy 。
ここに、テクニカルで歌もうまいギターの Eric Gillette とキーボードの Bill Hubauer 。
2枚組
作品は、InnocenceサイドとDangerサイドに別れた2枚組。
Dangerサイドには、20分と30分に渡る対策が含まれている。
安定
基本的には、安定の Neal Morse サウンド。
ただ、不思議なのは、これだけの安定感を出しつつも、マンネリ感はなく、
美しいポップサウンドとテクニカルな屈折が今回もやはり楽しい。
バンド演奏に加えて、オーケストレーションも所々に入れてくるなど、
曲ごとのスタイルのバリエーションが異なるところも、聴き応えにつながっている。
ポップサウンドから、お得意の Gentle Giant 的コーラスワークまで、実にいい。
カバー
意外とクライマックスなのは、Simon & Garfunkel の Bridge Over Troubled Water のカバー。
原曲の良さが十分にありながらも、このバンドらしいアレンジ。
傑作
しかし、毎度のこといい作品がリリースされてくる Neal Morse の才能に感服するしかない。
聴きやすさと複雑さの共存するまさに、現代プログレのお手本。
この作品も傑作なのでぜひ聞いてください。
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YES が新作 The Quest でたどり着いた境地
YES
プログレ4大バンドの一角 YES。そのメンバーの離合集散ぶりはよく知られているが、
近年は、Steve Howe, Alan White に加えて、Geoff Downes Billy Sherwood Jon Davison での活動となっている。
そして、このメンバーで新作 The Quest がリリースされたので聞いてみた。
正直近年の YES は、なんとなく惰性で買っておくかなという感じの位置づけ。
落ち着いた曲
全体的には、悪くないという感じ。
メンバー的にも、YES + ASIA 感があるからかもしれないけれども、
大仰に構えられた大曲指向はまったくなく、雰囲気の良いポップ・ロックな感触。
ハートフルな雰囲気が全般に広がっていて、
大いなるブランドである YES という看板にとらわれずに聞けば、
いい仕上がりのアルバムである。
IsideOut
今回の新作は、InsideOutからのリリースということで、そのこともこの作風に影響しているのかもしれない。
とにかく作品全体が高い品質で仕上げられているので、色々と思うところを超えて、
純粋に良く出来てるじゃんと思わせるプロダクション。
YESにこだわりすぎず
今までとは、また異なるYESの始まりという感触で捉えれば、
悪くない作品であると思う。
しっかりとかじりついて聴き込むというよりは、流しておいて、
その雰囲気に身を投じるという聴き方に合う作品だと思う。