カラフルで、複雑で、楽しいキーボード主体チェンバー Ske Insolubilia

Ske

Ske は、Yugenなどのバンドにも所属しているキーボーディスト。
ソロとしても作品をリリースしていて、今回は Insolubilia を聞いてみた。

キーボード

キーボーディストなので当たり前だが、キーボードプログレです。
これが、とても良くできた作品で、キーボードプログレの金字塔と言ってもいいレベル。
エマーソン的オルガンロックな曲もあれば、静謐なチェンバーロックもあり。
変速要素と疾走要素と幽玄要素が交互に登場して、
様々なスタイルのサウンドが、しかし、どれもレベルが高い。

バンドサウンドとしても

しかも、単にキーボードが一人目立っているという作品ではなくて、
バンドサウンドとしてもしっかりとアンサンブルができていいてバランスがいい。
Insolubilia Ⅱでは、女性ボーカルが響く中、フルートなどの管楽器系が飛び回る作品などは、
また、ちょっと違うテイストで、ポストロック感を出しているかと思いきや、
途中から変速して、細かいテクニカルなサウンドに変質していくあたりも、
曲としての展開も面白い。

絶品

これは、今年のベストに確実に上がってくる名作。
これほどカラフルに様々なスタイルが表現される一方で、
どの曲も完成度が高く、楽しめる作品にはなかなか出会えない。
超絶オススメ作品です。

Insolubilia

Insolubilia

  • アーティスト:Ske
  • Ske
Amazon

www.youtube.com

リリカルに美しい Nine Skies の 5.2

Nine Skies

フランスのバンド Nine Slies。2017年にアルバムデビューをしている。
その3枚めにあたる作品 5.2 を聞いてみた。

リリカル

サウンドは、王道な現代プログレで、聞きやすいメロディーながらも、
凝った音作りを行っていて、変化球要素を前面に押し出すタイプではない。
アコースティックなサウンドが多く、リリカルな感覚がつよい。
Hackett 兄弟がゲスト参加しているが、それも頷けるサウンド傾向で、
雰囲気に浸りながら、音を聴き込める、そんな音作りがされている。

現代プログレ

典型的な現代プログレと言って良いサウンドなので、
John Mitchell 系な Frost だとか、Kino あたりに親しい感触。
なので、そのあたりのサウンドが好きな人には、
このバンドもど真ん中だと思う。

良質な

良質な現代プログレという印象なので、
多くの方におすすめできる良質な作品です。


www.youtube.com

5.20

5.20

  • Anesthetize Productions
Amazon

不思議な現代アート感 Billie Bottle & The Multiple The Other Place

Billie Bottle & The Multiple

あまり背景はよく知らないのだけれども、Bandcampでなんとなく入手してみた作品、
英国のバンド Billie Bottle & The Multiple で、The Other Place。

現代アート的な

ちょっと、最近の Steve Jansen のアプローチのような静謐で現代アートのような音世界。
素っ気無い感じをしながらもへんてこ感満点で、
音楽性は、掴みどころがあるようでない。
この人懐っこさの全くない感じのサウンドがちょっと気持ちいい。

要素は色々

一方で、色んな要素が入っていて、
Billie Bottle による女性ボーカルが中心だが、
男性ボーカルとのコーラスもちょっと儚い感じがしたりして気持ちいいし、
一方でちょっとジャズっぽかったりもする。

なんだか

なんだか、やっぱり掴みどころがなくて、いい作品だと言っていいんだかって
気がしてしまうところもあるが、この不思議な感覚がこの作品の面白い所。
いつもとはちょっと違う世界観に触れたければ、ぜひ聞いてみて下さい。


The Other Place | Billie Bottle & The Multiple

ガルシア・マルケス「族長の秋」とその他の短編

ガルシア・マルケス

マジックリアリズムの騎手として、ラテンアメリカ文学の最重要人物でもある ガルシア・マルケス
後にノーベル賞を受賞することになるが、その初期に書かれた作品を、集めた作品集が、「族長の秋」。
私が読んだ新潮社版は、この表題作に加えて6篇が収められている。

初々しく

豊穣な語り口と複雑に入り組んだ物語が特徴的な彼の作品だが、この初期作品集では、
その始まりとしての、挑戦の姿が垣間見える。
表題作「族長の秋」は、後年の傑作「予告された殺人の記録」にも似た構成で、
事件から始まり、そこから語り手や時代が絡まり合いながら、ここに至る情勢を、
多岐にわたり表現していく。
ただ、やはりここでは依然として挑戦とも言える段階でもあり、時勢の変化や話者の変化が、
非常に混沌としていて、境目が混ざり合っているようにさえも感じる。
ただ、むしろこの未完成さがむしろこの作品集の魅力とも言えるだろう。

身体性

そして、その豊穣な表現はとても身体的であることを改めて感じさせてくれる作品でもある。
極限の語り口で身体性に至ったベケットとは全く逆のアプローチで、
豊穣な語り口で身体性を描く、ガルシア・マルケス
しかし、そこにある身体性は、人間の生命そのものに迫る描写を感じる。

短編の魅力

短編には、起承転結がきれいに収まらないところに魅力があると思うのだが、
この作品集はまさにそうであり、破綻しかかる姿がまた面白い作品である。

族長の秋 他6篇

族長の秋 他6篇

Liquid Tension Experience 3 パンデミック下の充実

Liquid Tension Experience

Mike Portnoy, John Petrucci, Jordan Rudess に、Tony Levin というプログレ界の凄腕が集結したバンド、Liquid Tension Experience。
あれそんなに立ってたんだっけ、というくらいの22年ぶりの新作 3 が出たたので聴いてみた。

作り込まれた

パンデミックによって、ライブ経験ができなくなるという悲劇に見舞われた音楽界ですが、
その反対に起きたいいこととしては、非常に作り込まれたレベルの高いアルバムが数々生み出されたという事実。
ライブで昇華されないエネルギーがアルバムに叩き込まれているという印象。
その影響は、この作品でもいえて、作品自体がしっかりと作り込まれていて、完成度が高い。
どちらかというと、凄腕揃いのインプロも魅力なメンバーであるけれども、
今回の作品は、しっかりと作り込まれた印象が強く、このバンドの素地である Dream Theater に近いテイストを感じる。

多岐にわたる

サウンド自体も多岐にわたるサウンドを用意している。
特にその起伏を楽しめるのが終盤にいたる、Shades of Hope のメローな穏やかな楽曲から一転して、
緊迫感のある長尺の Key To The Imagination への流れ。

さすがの

とにかく、さすがというしかないですね。
彼らの期待したい内容が、期待以上に詰め込まれた作品です。

LTE3 (2CD)

LTE3 (2CD)


www.youtube.com

久々に登場の The Prize Fighter Inferno は、やっぱり、あまーい

The Prize Fighter Inferno

The Prize Fighter Inferno は、Coheed and Cambria の Claudio Sanchez によるソロ活動。
2006年に My Brother's Blood Machine と題されたアルバムがリリースされていて、
Coheed and Cambria ファンの間では、密かな人気を誇る作品。
かなり久しぶりに、フルアルバムとして、The City Introvert がリリースされたので聴いてみた。

エレクトロニカとアコースティカ

Coheed and Cambria とは異なり、メタル色はなくなって、エレクトロニカ全開なのが、
このバンドの特徴。マシーンリズムの軽快さにのせながらも、甘いメロディーラインは、
むしろ、このバンドではより強化されていて、耳障りの良い、
そして、頭にこびりつくメロディに満ちている。

バリエーションを広げ

今回の作品でも、上記の傾向は踏襲しているものの、音の幅が広がっているという印象。
アコースティックなシンプルさもあれば、ラップ調のものまで含まれる。
なので、ポップな軽快さを持ちながらも、アルバムとしての聴き応えもある。

耳残る

Coheed and Cambria でもキラーチューンを連発しているが、
この作品では、サウンド自体が軽快なので、そのキラーチューンがますます鋭くなり、
本当に気持ちよすぎるサウンドに仕上がっている。

異色だが傑作

もはや、メタルでもなく、プログレでもなくな世界にもなっているが、
音楽そのものの良さがあるので、そういったジャンルを超えて、
とても楽しめる作品となっている。

Roll For Initiative

Roll For Initiative

  • 発売日: 2021/04/23
  • メディア: MP3 ダウンロード


www.youtube.com

トラッドな雰囲気ただよう空間 Anneke van Giersbergen の新作ソロ

Anneke van Giersbergen

オランダの女性シンガー Anneke van Giersbergen。
The Gathering での活動に始まり、近年では、様々なプログレ系プロジェクトバンドで活躍。
Devin Townsend の作品への参加などもあり、現代プログレで最も重要な女性ボーカリストの一人。
そんな彼女の新作ソロ The Darkest Skies Are The Brightest を聴いてみた。

トラッドな

ラジカルトラッドとも親しいテイストで、トラッドというか、アコースティックな雰囲気の強い作品。
メタル系のサウンドの印象が強い彼女だが、ここでは少し異なる雰囲気を出していて、それがいい。
比較的シンプルな曲調であるがゆえに、ボーカル表現力がなおさら際立ち、
低音/高音、硬めの声質から柔らかい声質を使い分け、多重にボーカルをかさねる。
ソロらしく、ボーカルの表現力が際立つ作品。
ちなみに、私は、アナログも入手したが、レコードで再生すると、より趣があっていい。

プログレという枠を超えて

おそらく、この作品を聴く人は、間違いなく、プログレ・メタルあたりのリスナーだろうけど、
実際には、プログレメタル色は薄くて、女性ボーカル好きには広範に受け入れられそうな作品。
とても聞きやすく、一方で、しっかりと構築された作品でもあるので、
より多くの方に楽しんでいただきたい作品です。

The Darkest Skies Are The Brightest

The Darkest Skies Are The Brightest