魂心すぎる Transatlantic 待望の新作 The Absolute Universe

Transatlantic

現代プログレ界を代表する猛者により結成された Transatlantic
Mike Portnoy, Neal Morse, Roine Stolt, Pete Trewavas の4人。
大仰の世界とポップな世界、テクニカルな世界とメロディアスな世界が見事に織り合わせられた、
楽しくも壮大な世界がファンを魅了する。
そんな彼らの久々の新作 The Absolute Universe を聴いてみた。

3種類

今回の作品でユニークなところは、合計3種類のエディションがリリースされているところ。
CD1枚分に収められた The Breath Of Life (Abridged Version)。
CD2枚組の Forevermore (Extended Version)。
そして、BluRayに収められた The Ultimate Version。
しかも、これらが、単にアウトテイク集とかではなくて、
それぞれに意図を込めて編集されているので、それぞれの作品として楽しめる。

アナログもデジタルも

また、最近のリリース作品らしく、ボックスセットは、レコードに加えて、Blurayハイレゾ多チャンネルが含まれる。
アナログは、透明仕様でもあったりするので、コレクションとしても価値がある。

らしい

壮大なオープニングから始まるところから、ぞくぞくとする。
基本的な展開は、やはり、ポップでありながらも、曲の構成は複雑で、
ときに長尺な曲が挟まってくるところは彼ららしく、期待通り。

王道

大きな変革はなく、まさしく王道な路線だが、このど真ん中をしっかりと
質高く、新鮮さも伴った作品に仕上げるのはさすが。
とにかく、どっぷりと浸かり込める楽しい作品です。


TRANSATLANTIC - Looking For The Light (OFFICIAL VIDEO)

アートな Steven Wilson の新作 The Future Bites

Steven Wilson

もはや、プログレ界を超えて、活躍する Steven Wilson。
その活躍は、ミュージシャンとしてのみならず、リミックスエンジニアとしての活躍も見過ごせない。
そんな、Steven Wilson の待望の新作 The Future Bitesを早速聴いてみた。

エディション

近頃は、音楽ハードはグッズ化していることもあり、この作品のリリースも、スペシャルエディションから、
レコードも、赤と黒で、さらに、カセット。そういったアナログ展開がある一方で、
Blurayには、ハイレゾが収めれている。
私は、残念ながら、Limited Edition を入手できなかったので、ボーナスディスクの様子はわからず。

2つの側面

ここには、2つの側面がある。
いままでのSteven Wilsonの色合いとしてのフォーク調でシンプルでメロウなポップサウンド
一方で、ダンサブルなディスコサウンドがそこに挟み込まれる。
この新機軸と真骨頂の混じり合いが、新鮮さとともに安定した心地よさを生み出している。

アートな

そして、見逃せないのは、もはやサウンド的にもだが、プログレという枠を超えて、独自のアートな世界に突入しているところ。
Marillion なんかも、もはや完全に独自の世界を構築する側に進んでいて、近頃の、プログレ系な人々は、
まさに、プログレッシブな進化を見せている事例が増えていて、Steven Wilsonもまたその一人。
ジャケットのあーとわーくから、YouTubeの展開なども含めて、とても、アーティステック。

歌詞世界

おそらく、歌詞で描かれている世界も意味深長だろう。
残念ながら、しっかりと読み込めていないのだけれども、冒頭の Self から Unself と続く展開は、
サウンド的にもそして、タイトル的にも示唆を多く踏み、現代社会を象徴するかのようだ。

Personal Shopper

10分に迫る大作であり、Youtubeでも公開された、Personal Shopper がこの作品の一つのクライマックスだろう。
ハイトーンで歌われるサイバーなイントロから、ダンサブルな展開へ。
揶揄しているようにも感じられる歌詞もであるが、揶揄というよりも事実と捉えるべきかもしれない。

圧倒的

完成度としては圧倒的。そして、ボーナストラックを除けば、レコード両面に収まる分量に絞り込んでいる。
ディジタルでもはや分量に制限のない世界になったにもかかわらずあえて、レコードに収まる分量にしたところは面白い。
そして、その圧縮の中で、圧倒的な完成度を作り上げたところはさすがだろう。
もはや、プログレという枠ではなく、全音楽好きにおすすめしたい作品となった今作。
いや、いいですね。

THE FUTURE BITES

THE FUTURE BITES


Steven Wilson - PERSONAL SHOPPER (Official Video)

トラッド味を加えて、しめやかに、穏やかに Lunatic Soul

Lunatic Soul

ポーランド出身 Riverside の Mariusz Duda によるサイドプロジェクト Linatic Soul。
ポストプログレッシブな雰囲気をもたせたこのバンドの新作 Through Shaded Woods がリリースされたので、聴いてみた。

トラッド

このバンドが持つコンセプト通りに、静かな世界はこの作品でも継承されている。
そこに、更に新しい味わいとして、トラッドの雰囲気が加わっているのがこの作品の特徴。
従来の、北欧的な寂寥とした世界を描きながらも、そこに、
トラッドによる静かな活気が加わり、作品の映像に深さが出ている。

穏やかに

全体的に抑揚はあるものの、トーンとしては穏やか。
この穏やかさこそがこのバンドの特徴であり、寂しさも含むその表現が、
翻って暖かさとして感じられる。
先述のように、トラッドを加えることでその陰陽が強まり、
心地よさがより深まっている。

タイトル通り

その雰囲気は、まさに、タイトルに示されている Through Shaded Woods にピッタリ。
その音楽世界にしっとりと染み込んでいき、ある意味、音楽が流れていることを忘れるほどの
忘我の境地にいざなってくれます。

おすすめ

まさに、Burning Shed系サウンドを代表するサウンドであり、
Steven Wilson を始めとしたバンドを好む方には超おすすめです。

Through Shaded.. -Digi-

Through Shaded.. -Digi-

  • アーティスト:Lunatic Soul
  • 発売日: 2020/11/13
  • メディア: CD

Lunatic Soul Album Through Shaded Woods (2020)

友人を横糸に語るヘンリー・ミラー「友だちの本」

ヘンリー・ミラー

自由奔放な人生を自由奔放でありながらも、フラットで正確な描写で描く作家、ヘンリー・ミラー
そんな彼らの作品群から友人について書かれたものをまとめたものが、水声社から出版された「友だちの本」。
「友だちの本」「ぼくの自転車、そのほかの友だち」「ジョーイ」「わが人生におけるほかの女性たち」が含まれる。

横糸

ヘンリー・ミラーの人生はすでに彼自身の多くの本で描かれれているが、この作品は、友だちを通してみえるいわば横糸のような作品。
彼の代表作において、描かれてきた世界を違う視点から眺め直す、そんな趣をもった作品とも言える。
なので、彼の作品をある程度読み通してから、この作品を読むべきというところはあるだろう。

自由で、しかし、フラット

ヘンリー・ミラーの作品というと、自由な書き方や赤裸々な内容に目が行くが、それは違う言い方を使うと、フラットであるということ。
完全に主観が抜けているとまでは言うつもりはないが、どんな事象も、飾りすぎることなく、正確にフラットに描きあげている。
ここが彼の作品の魅力であって、我々の人生における他社との関係性の中では包み隠したらい、むしろ大げさに語ったりしてしまう要素が、
すべて、ある意味、淡々と描かれていく。このフラットさが、我々が日常生活では失っているものを、補正してくれる。

真実なき世界

おそらく、彼の生きていた時代には、紙媒体がメディアの主流の一つであっただろうし、
そこでは情報が不足しているがゆえの真実なき世界であったのだろう。
その意味では、いまやこの彼の正確でフラットな記述と、様々な芸術家との交友は、歴史的な記録としても意味を持ちそうだ。
また一方で、この現代はインターネットによる過剰な情報による真実なき世界に突入している。
先述のような、フラットな表現は駆逐され、過剰に演出され隠蔽された虚飾の表現が跋扈する。

皮肉

発禁処分までうけ表現者の敵でもあるかような扱いを受けた彼の作品が今の時代から見ると、
むしろ、正確な表現で真実に肉薄した貴重な表現者であり、今の時代には別の刺激を感じるところは皮肉であり、
これこそが時代と価値観の変化であるとも感じさせられる。

これもまたいい

彼の代表作郡からすると、こぶりな作品ではあるが、アナザーストリートしての面白さがあるので、
彼のファンにはぜひ面白く読めるだろう。

なんだ、意外といいじゃん Nick Mason’s Saucerful Of Secrets

Nick Mason’s Saucerful Of Secrets

最近は、ソロ活動でお盛んな、Pink Floydの面々ですが、メインは Roger Waters と David Gilmore との印象でしたが、
ここにきて、Nick Mason もソロ活動を開始、Nick Mason’s Saucerful Of Secrets と名付けられたバンド名でのライブをスタートしています。
そんな彼らのライブが、映像作品 Live At The Roundhouse としてリリースされたので、視聴してみました。

初期

前者2名とアプローチが異なるのは、彼らは、中期・後期およびソロ活動と交えた作品を演奏しているのに対して、
このバンドは、Syd Barett がいた時代も含む初期作品を演奏するというところ。
正直言って、あの味わいを出すってのは、難しい気がするのと、3番煎じ感があって、実はあまり期待していませんでした。

意外にも

ところが、意外にもこれがいいんです。
初期のサイケ色の強いサウンドで、若気の至りな感じもあるやんちゃな曲をいいおじいちゃまたちが演奏するギャップはどうなのかと
思っっていたのですが、これが、結構ハマっています。
初期のダルで、だけどポップな感じと、ちょっとずらしたリズム感のところがしっかりと演奏されていて、
でも、はしゃいだ感じが、逆にベテランが出しているので却って、楽しそうに演奏しているさまがいい感じ。

アレンジ

原子心母も、かなり短縮バージョンになっていますが、アコースティックな If と挟んだ構成は、
心地よい夢遊空間を作り出しています。
加えて、ポップな名曲、Arnold Layne や Bike は心地よくてたまらない。

ライブ

この Covid19 でライブに行くのが困難な時代になりましたが、再び可能になったときには、
ぜひ見に行きたいバンドの一つだと言うことが認識できる映像作品です。


Nick Mason's Saucerful Of Secrets - Live At The Roundhouse (Trailer)

Dream Theater このご時世は Stay Home で充足を

Dream Theater

早大ベテランとも言うべき、プログレ・メタルの雄 Dream Theater
Distance Over Time リリースに合わせてのライブパフォーマンスは、さらに、その第二部として、
かの、Metropolis Part 2: Scenes from a Memory の完全再現パフォーマンスを用意された。
しかし、他の例にもれず彼のライブも、Covid19 により中断を余儀なくされた。
そんな中、このライブツアーより、ロンドン公演が映像作品としてリリース。
Distant Memories と第されたこの作品で、Stay Home でもライブの興奮を味わえることとなった。

Distant Memories

先述の通り、二部構成の作品。一部は、Distance Over Time を中心とする通常のライブパフォーマンス。
演奏力的には最強の布陣を敷く彼らは、いくら複雑な楽曲でも安定の水準を保ち続ける。
複雑ながらも、激しく、のりがあり、そして、ときにバラッドでしっとりと。
最早何も言うべくもない演奏に、ただ釘付けになる。

第二部

そして、第二部。もちろん、新作もいいが、やはりこの歴史的な名盤の再現ライブは楽しみでしょうがない。
ここもまた、彼らの圧巻の演奏技術により、見事な再現が続くのだけれどもやはりクライマックスは、
The Dance Of Eternity。
なんという、疾走感もあるし、のりの激しさもあるのだけれども、あれだけ複雑な拍子展開が、
高速で走り抜けていくさまには、むしろ、静止して見入ってしまわないで入られない。
一体何が起こってるんだって感じ。
これは、何度見ても変わらない印象。

やっぱりすごいね

とにかく、言葉が出ないですね。すごいとしか。
最早職人芸のような次元。
どの作品もそうですが、やはり、この作品もまた必携の作品です。
お家でゆっくり何度も堪能しましょうという感じです。
お見事。


Dream Theater - Paralyzed (Distant Memories Bonus)

Distant Memories - Live in London (Bonus Track Edition)

Distant Memories - Live in London (Bonus Track Edition)

  • 発売日: 2020/11/27
  • メディア: MP3 ダウンロード

まったりと落ち着きにあふれる Pineapple Thief の Versions Of The Truth

Pineapple Thief

英国のもう一つのPT、Pineapple Thief。ポストな感じとプログレな感じとで雰囲気のありながらも変化に富むサウンドが特徴。
まさに、Kscope というサウンドとも言える彼らの新作 Versions Of The Truth を聞いてみた。

まったりと

サウンド面だけで言えば、非常に落ち着きに満ち溢れた雰囲気のある作品。
ある意味、バックグランドミュージックとして流していると、本当に心地よい。
ただ、一方で、深い洞察も彼らの特徴であり、
まさにこのアルバムタイトルである、Versions Of The Truth は、
真実というものが何かわからなくなった現代を表現している。

しっとりと

その意味では、しっとりとそのサウンドの良さが染み込んでくるようなそんな作品。
パンチの聞いた激しさや、一発でノックアウトするメロディアスな楽曲はないが、
ずっと聞いているとその良さがどんどんと染み込んできて、
いつもそこに流していたくなるようなそんな心地よさのある作品。

いいですね

年々評価が上がっているとも感じられる彼らですが、
この作品でもまた完成度を上げてきたという感じ。
おすすめです。

Versions of.. -Deluxe-

Versions of.. -Deluxe-


The Pineapple Thief - Versions of the Truth