ガルシア・マルケス「族長の秋」とその他の短編

ガルシア・マルケス

マジックリアリズムの騎手として、ラテンアメリカ文学の最重要人物でもある ガルシア・マルケス
後にノーベル賞を受賞することになるが、その初期に書かれた作品を、集めた作品集が、「族長の秋」。
私が読んだ新潮社版は、この表題作に加えて6篇が収められている。

初々しく

豊穣な語り口と複雑に入り組んだ物語が特徴的な彼の作品だが、この初期作品集では、
その始まりとしての、挑戦の姿が垣間見える。
表題作「族長の秋」は、後年の傑作「予告された殺人の記録」にも似た構成で、
事件から始まり、そこから語り手や時代が絡まり合いながら、ここに至る情勢を、
多岐にわたり表現していく。
ただ、やはりここでは依然として挑戦とも言える段階でもあり、時勢の変化や話者の変化が、
非常に混沌としていて、境目が混ざり合っているようにさえも感じる。
ただ、むしろこの未完成さがむしろこの作品集の魅力とも言えるだろう。

身体性

そして、その豊穣な表現はとても身体的であることを改めて感じさせてくれる作品でもある。
極限の語り口で身体性に至ったベケットとは全く逆のアプローチで、
豊穣な語り口で身体性を描く、ガルシア・マルケス
しかし、そこにある身体性は、人間の生命そのものに迫る描写を感じる。

短編の魅力

短編には、起承転結がきれいに収まらないところに魅力があると思うのだが、
この作品集はまさにそうであり、破綻しかかる姿がまた面白い作品である。

族長の秋 他6篇

族長の秋 他6篇