暗号解読という本が技術的にも読み物としてもとても面白い



サイモン・シン

BBCの記者で、「フェルマーの最終定理」という文字通り、フェルマーの最終定理についてのノンフィクションも出版しているサイモン・シンという人物の書いた暗号に関する歴史と今、そして、未来を描いた「暗号解読」を読んだ。


中世から

暗号の歴史は古い。この作品では、1586年の出来事から始まっている。郵便しかなかった当時の文書の暗号とその解読が物事の大きな転換点にも成ったという劇的な事例が取り上げられる。
そのように古くからあった暗号について、その暗号と解読といたちごっこの歴史が、そこから語られていく。


解読

画期的な暗号が作られては、それが破られていく。そして、その暗号の解読が通信技術が紙から電信へと変化し、さらにインターネットへと進化する毎に、その重要度を増していく。
先の二つの世界大戦においては、ある意味では暗号解読の戦いだったのではと思わせるほどに、見事に、暗号のはたした役割がここに描かれている。


政府と市民

元は、戦争や権力闘争において、大きな意味を持った暗号と解読であったが、インターネットの世の中になり、通信が容易になると同時におとずれた通信の安全性の問題がより重要と成ってきて、そして、それは国家間の闘争だけではなく、政府と市民の対決という様相を呈し始める。
ネットの世界ではよく知られたPGP暗号は、全ての通信を監視可能な状態にしたい政府と、権利として暗号を使うことを主張したい市民との闘争へと進む。


歴史そのもの

この本の見事なところは、暗号の歴史が、世界の歴史状況と見事にリンクしていて、暗号が歴史を影で動かしていたというレベルのものに感じ取れもするように描かれていることだろう。
そういった側面があるので、単にテクニカルな暗号の話し以上に面白く読むことが出来る。


展開

さらに、この本では、少し異なった視点で発掘された失われたた言語の解読として、例えば、ロゼッタストーンなどが取り上げられていて、コレについても、非常に面白いものがある。


量子

さらに、未来の話しとして、量子コンピューターによる暗号解読と、量子暗号による究極の暗号にまで言及されていて、そして、そこで暗号そのものが究極のレベルに到達し、暗号と解読の歴史の終焉までも描いて魅せている。


見事

このように社会的な側面とうまくリンクさせながらの描写であるのだけれども、暗号に関する技術的な内容についても深く掘り下げられていて、テクニカルな意味でも満足できる内容。
これは見事としか言いようが無い。とても面白い本でした。


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暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
発売元 : 新潮社
発売日 : 2001-07-31 (単行本)
売上ランク : 64686 位 (AMAZON.co.jp)
¥ 2,730 在庫あり。
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