ポーランドにおけるナチスとの戦いを描いた話題作 HHhH



HHhH

今回紹介するのは、フランスの作家、ローラン・ビネによる作品「HHhH」。この作品によって、ローラン・ビネは、フランスの由緒正しき文学賞であるゴンクール賞新人賞を受賞している。
この不思議なタイトルは、日本語訳すと「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」となる。


ナチス

ヒムラーは、ナチス時代の親衛隊の長。その部下であったのが、ハイドリヒであり、ナチスの中でも、最も残虐であった人物の一人だそうだ。
そのハイドリヒは、ポーランド占領時に、占領政府の長として、ポーランドを治めていた人物。この人物のことを当然、倒したいと思うのは、当時英国にあったポーランド臨時政府。その臨時政府によって類人猿作戦が計画されて、そして、派遣されたパラシュート部隊が襲撃へ向かうさまとその後がこの作品には描かれている。


ノンフィクション

ということなので、この小説は、ある意味では、ノンフィクション小説である。ナチスによるポーランドへの侵攻前夜から、侵攻。そして、それと呼応して計画された作戦の進捗とその作戦に関連していた人物の過去を含めた動き。そして、作戦の決行。その後のナチスによる捜査と逆襲。


ドキュメンタリー

しかし、そういった内容を歴史小説的に描き出すだけではないのが、この作品が話題をさらい賞を受賞しているが所以。
ドキュメンタリー的な要素があるのは、作者自身が、この過去を取材しながら、徐々に物事を解明し、客観的な描写だけではなくて、同時に作者の主観的な感情があらわになるようでもあるように物語というよりは、作者による直接的な語りかけのような描写もされる。


メタ文学

一方で、作者自身による語りかけにおいては、どのように描写するのか?という作品そのものに対する語りかけも含まれている。他の作家による作品に対する言及。そもそも、ノンフィクションにおける描写や会話においては、総てが取材によって事実が明確になるわけではないために、作者による補完が行われるわけだが、その補完についての作者が持っている疑念なども吐露される。


渦巻きながら

そんな、三種類の要素が入り交じりながら、作品は進む。そして、それらが入り交じりながら、作品はハイドリヒ襲撃とその報復というクライマックスへと迫っていく。
こういった凝った作品の造りの場合、作品としてはもう一つ面白みや盛り上がりに欠けてしまう場合があるが、この作品は見事にクライマックスへとむかって盛り上がりを見せて、読者の感情をいろいろな意味でかき乱すようでもある。


確かに

確かに、話題になるだけはある面白くて、刺激的な作品である。
実験的要素としては、それほど新しい感じではないけれども、逆にそんなところが、あまり実験的な作品を読むことになれていない人でも読めそうな雰囲気がある。
なので、様々なタイプの文学好きに受け入れられる作品だと思う。


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