東京オペラシティにて、「アートがあればII」を見てきた



アートがあればII

現在東京オペラシティにて開催されている展示は、9人の個人美術コレクターの作品を集めた展示で、「アートがあればII」と題されたそれ。
にわかに注目を集めているとも思われる現代美術の個人コレクション。その楽しさを伝えるための展示がこれといってもいいだろうか。


柔らかに

個人コレクションだけあって、名の通った作家のものもあればそうでないものもあり。主に現代美術の作品も多く、必ずしも作品そのものが大きな力を持っているというものではない。
むしろ、美術が何処かで持つ公共性に対して、ここにあるものは私的な印象の強いもの。より広範な視点で見たときの美術作品の価値を展示するというのではなくて、個人に根ざした時にまた別の価値を帯びてくる美術の価値を提示していると言える。
いわば、硬い展示ではなくて、柔らかい展示。


美術とは

美術というと、何処かお高くとまったというのか、権威的なものすらも感じるところもあったり、もしくは、その価値が一般人には理解不能で、別世界で価値が決まってしまっている異世界のような印象を持つ人もいるだろう。
美術作品には、圧倒的な偏執狂的なものであったり、もしくは、そのものの存在意義の小ささを感じつつも表現する悟りの境地のようなものが、必要なところがあって、非常にストイックに評価しなければ評価できないという、先述したとおりの公共性が挟まり混んでくる場合がほとんどであり、結果として、美術館の多くは公共のものと成っている。そして、さらに、上記のような異世界のものという取り扱いになってしまう。
しかし、美術のもう一方の側面としては、より個人に根ざした意味でのシンパシーであったり、ファッション性や工芸性なんかも内在しているのは事実で、いわば交響楽団が演奏するクラシックもあれば、アイドルが歌うポップソングもある音楽と同じように捉えれば、もっと、気軽なものであってもいいはずであるというのは確かにそうであろう。


愛着

その意味では、ここにされている展示は、所有者の個人に根ざした視点で捉えたときの美術とは何かということを提示している展示でもあるだろう。そして、その視点で美術を捉え直すと、小難しい美術の解釈だとかを超えて、単に自分が好きか嫌いか欲しいか欲しくないかというレベルで美術を捉え直してみることも出来る。
実際、ここに展示されている作品は、結構多彩なので、この作品は欲しいなとか、これはあんま趣味じゃないななんて思いながら作品を鑑賞できる。なので、結構かるい感じで楽しめる展示でもある。


どこで

そんなスタンスで作品を眺めながら思うのは、我が家にもそういう現代美術の部屋があってもいいなって思えてくるところは、そういった側面から、現代美術をもっと盛り上げていくという流れにもつながるのだろう。
ただ、実際のところはどこで作品を買ったらいいのか、結構難しかったりする。


収蔵品展

で、そんな展示を見終えて、いつもの通り、収蔵品展のほうへ向かう。本日のテーマは、カラー。抽象画を中心に色が印象に残る作品が並んでいる。こちらは、展示の仕方や鑑賞者の心構えもあってか、やはり、企画展の雰囲気とは違って、どこかストイックだ。
その中でも、難波田史男の作品が数点飾ってあったのがうれしかった。
個人コレクションの展示もいいが、こういった、美術館独特の雰囲気を鑑賞する方がやっぱり個人的には好み。日常の様々な価値観を離れて、能が、リセットされて行くのを感じる。普段の近視眼的な価値観から離れて、存在とは自分とはというのを感じ直すには美術展というのは、やはりいいものだ。その意味では、やはり作品には、偏執狂的な、もしくは、悟りの境地のようなものが必要で、そして、それがにじみ出る作品を眺めていると、生理現象レベルのシンパシーが訪れてくる。私は、難波田史男の作品を眺めているとそんな境地に入り込めた。すばらしい美術の体験である。

関連リンク:
アートがあればII ─ 9人のコレクターによる個人コレクションの場合|東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティ アートギャラリー
関連サーチ:
東京オペラシティ アートギャラリー(AMAZON.co.jp)
東京オペラシティ アートギャラリー(Google)
Powered BY AmazoRogi