安部公房の幻の作品を収録した初期短編集「題未定」



安部公房

私が最も愛する作家、安部公房ノーベル文学賞を何故取らなかったのだろうかと最も残念がられている作家の筆頭でもある。
そんな安部公房の幻の初期作品が、昨年発掘されて、新潮に掲載された。
その作品「天使」を含む初期短編を集めた短編集「題未定」が発売されているので読んでみた。


全集では

すでに、安部公房全集が完結していて、その全集を全て読んでしまった私としては、もう二度と新鮮に安部公房作品を読むことは無いと思っていたのだけれども、こういう機会が出来て何ともうれしい限り。
また、全集では、原文を尊重していたけれども、この短編集に納められている新発見の作品以外は、明らかなミスなどは修正されているそうだ。


天使

天使と題された新発見の作品には、その後の安部公房の独特の作品世界へとつながることを思わせる独特の世界がすでに披露されている。
一見普通とは変わりないと思わせる書き出しの中から、少しずつ非日常が顔を出し始めて、その違和感を抱きながら、読者はそのウラにある世界を理解し始めるという仕掛け。それは、安部公房初期作品にある過剰な哲学的な表現や逆に後には姿を潜める叙情的な描写などは、あまりなく、正にその後の安部公房の世界につながる貴重な作品だと思う。


そのほかも

そのほかに納められている作品についても、一度は読んだことがある作品ではあるものの、しかし、改めてこうやってみると、そこにある作者自身の模索とそして時代の混乱が文章の中からにじみ出してきていて、そこに、むしろ力を感じさせてくれる何かがあることを再確認させてくれる。


やっぱり

やっぱり、安部公房です。私にとっては、安部公房の存在は、文学者としての存在以上に重要な存在であるとそれを再確認することも出来た作品でした。


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(霊媒の話より)題未定: 安部公房初期短編集
発売元 : 新潮社
発売日 : 2013-01-22 (単行本)
売上ランク : 27352 位 (AMAZON.co.jp)
¥ 1,680 在庫あり。
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