ウクライナの忘れられていた作家シギズムンド・クルジジャノフスキイの短編集が鋭い



シギズムンド・クルジジャノフスキイ

私は、なんとなく本屋でこの本を見つけて、何かを感じて読むことにしたのが、シギズムンド・クルジジャノフスキイ というロシアというかウクライナの作家の短編集「瞳孔の中」。
この作家は、最近、ロシアでも全集が刊行されるなど、再評価が高まっている作家であるという。そんなこともあってか、今回、短編集として日本語訳が発刊になったのだろう。


国際的作家

作品は、カフカ安部公房の類に入る作風で、現実の中に仮想的な状況を作り上げて、その状況を描き上げるスタイル。また、作品のテーマは哲学的で、文学として表現すると言うこととはというアンチロマンな問いかけから、夢と現実およびそれらの認識についての問いかけ、恋を基軸に人間との関係性を問いかける作品、そしてあと少しで出来そうな不可能なことについての問いかけなど、単に物語を物語るだけではなく、その物語を通じて、象徴的に人間とはということを描き上げている。


随所に

そして、随所に各作品の全体のテーマを物語るような象徴的な言葉がちりばめられていて、その言葉とそこに描き上げられている仮想的な世界が相まって、人間の内的な感情があぶり出されている。その随所にある言葉が非常に示唆に富んでいるので、その言葉に触れた途端にぐっと感情に来るものがある。


内省的

それは、おそらくこの作家のもつ内省性にあるのだろう。内省的な作家は、必要以上に内部に沈み込む。肥大化した自己によって、とらえられる外部事象。そもそも、観察者である自己によってのみとらえられる存在環境は、そのような肥大化した自己によって認識し表現されたときには、ちょっとした景色でさえもが、肥大化した自己のレンズによって変形されてしまっている。まさにそのような要素を強く感じるこの作品は、その肥大化した自己をひしひしと感じさせられるが故に、痛々しいほど心地よいものを感じる。
そして、その肥大化した自己を通じて、世界は異なる状態に捉えられ直されているが故に、上記のように現実の中に異世界が入り込んだ描写として作品が構築されているのだろう。


いいです

というところで、私はカフカ安部公房の作品が大好きなので、このシギズムンド・クルジジャノフスキイの作品はとっても楽しく深く味わうことが出来た。今後、この作家の作品がより多く日本語に訳されて出版されるといいのにと期待いたします。


関連リンク:
図書出版松籟社ホームページ :: 瞳孔の中
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瞳孔の中 クルジジャノフスキイ作品集
発売元 : 松籟社
発売日 : 2012-07-31 (単行本(ソフトカバー))
売上ランク : 337466 位 (AMAZON.co.jp)
¥ 1,680 在庫あり。
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