こないだ映画を見た「コズモポリス」を単行本で読んだ



コズモポリス

日劇場公開されていた映画、「コズモポリス」は原作があって、それなりに知られた作家ドン・デリーロによる作品がベースと成っている。
なんとなく、この作家にも興味を感じたので、原作を読んでみることにした。


忠実

原作を読んでみて感じるのは、映画がかなり原作に忠実に描かれていたと言うこと。結構原作を知っていると、原作との乖離を映画に感じることもあるけれども、これが驚くほど、忠実。
唯一大きく違うのは、扱われている通過が、原作では、円であったのが、映画では元になっていたというところ。このあたりは、時代背景もあって、投資対象となるような不安定要素を持つ通貨の位置づけがかわったということもあるのだろう。


1対多

この作品を読んでいて感じるのは、個人が世界になってしまった世界感と、一方で、多が世界からはみ出してしまった世界感。一人の男が、株式を通して、世界に影響を与え、そして、やげて、自らがそのなかに飲み込まれてしまう。一方で、その中にすでに飲み込まれてしまったお琴からすると、世界なんてものは遠い彼方にあって、ただ、廃墟と成ったビルだけが、彼にとっての世界になっている。いや、むしろ、その中に世界から逃げ込んでいる。
最終盤のシーンは、その対照的な男の対話になる。


哲学的か

しかし、その対話は一瞬哲学的なようで、しかし、それほどの深みは持たない。お互いに、言い訳と知らないふりを繰り返すばかりでもあるようだ。
決して深まらない議論には、お互い利己だけがそこにあって、真相としては、どちらも世界を深く見ているわけではなかったと言うこと。
それぞれが、表面的に世界を舐めていて、そして、そこで、成功したものと失敗したものと。


空虚

つまり、そのようなものしか生み出せないこの世界に対する警鐘でもあるのだろう、この作品は。あまりにも身近になりすぎた世界の感覚が、絶頂感と絶望感を人の存在を脅かすほどのレベルにつながってしまうと言うことを、この作品は描いているのだと。
そして、そこに残るのは、どちらにとっても空虚な世界であって、だったら、いっそのこと、通貨がネズミに変わってしまった方がいいということか。


文学

映画では、やはり、様々な刺激的な描写を持ってして、人を惹きつけると言うこともあり、刺激的な印象が強く残ってしまうが、こうやって、文学によって鑑賞すると、それとはまた違う側面まで深めていくことが出来る。
このあたりにもまた、この作品のテーマに準じる何かを感じる。


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