カウリスマキ監督より素朴な物語「ル・アーブルの靴磨き」



カウリスマキ監督

アキ・カウリスマキ監督は、庶民の中でもより質素に不器用に生きている人々を描く作品を多く撮影している監督。その独特の古くさい画面作りやセット、俳優などによる演出とも相まって、そのほとんどなんにもない中に人間臭さを織り込んでいくような作品を撮る監督である。


ル・アーブルの靴磨き

そのカウリスマキ監督の2011年作品で、日本では2012年に公開となった最新作「ル・アーブルの靴磨き」を見に行ってきた。
舞台は、もちろん、ル・アーブル。フランスの港町。そこに暮らす、マルセルは靴磨きの男。そして、家族は、妻と愛犬。裕福とはいえない暮らしながらも、街の中の仲間たちと共に暮らす穏やかな生活。


密航者

そこに訪れた、ちょっとした人生の転機。密航者であるアフリカの少年をかくまうことになったマルセルと、そして、街の仲間たち。それは、決して裕福でないからこそわかり合えることなのだろうか。
しかし、マルセルにはもう一つの人生の転機が訪れていた。妻が病気となり入院することに。


淡々とする人々

カウリスマキ監督の映画特有なのだが、どの人物もが、淡々としている。この主人公も、にじみ出るような必死さを感じさせるのだが、しかし、大げさに慌てたりはしない。病気となった妻もまた同じく。泰然自若としたその感じが、すばらしい演出に感じられてくる。


そして

カウリスマキ監督にしては、この映画は、全体にしっかりとしたストーリーがあって、ちゃんとしたエンディングが用意されている。そのエンディングを迎える。そこでも、劇的なことが起きているはずなのに、劇的な表情を見せてしまう人は誰もおらず、ただ、それが当たり前であるかのように、また次の日常を生きていこうとする。何もこだわりすぎないその姿が、むしろ、感動的である。よくある、大げさな演出にすれば、これだけのストーリーがある映画であれば、泣けるぐらいなのかもしれない。でも、そうしないことのすばらしさ、ただ、自分の思うことを行い生きていく庶民の力強さが、むしろ、この演出によって浮かび上がっている。さすが、カウリスマキ監督である。


庶民の生き様

カウリスマキ監督の映画には、社会的勝者といえそうな人物は登場しない。しがないと表現してしまえば、それだけの人々。そんな人々描き続けている。しかし、これこそが真実なのかもしれない。
我々が、ついつい持ってしまう価値観に対して、そっと違う視点を口添えしてくれるようなそんな映画です。


関連リンク:
映画『ル・アーヴルの靴みがき』公式サイト
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