カズオ・イシグロ原作の映画「私を離さないで」を観た



カズオ・イシグロ

カズオ・イシグロは、日本生まれだけれども、そのほとんどを英国で暮らし、現在は英国籍をとって、英国人となっている作家。当然、その作品も英語で書かれている。邦訳もかなりされているし、映画化された作品も多い。また、ブッカー賞を受賞している作家でもある。


私を離さないで

そんな、カズオ・イシグロ原作の映画「私を離さないで」を観てきた。臓器を移植により提供するためだけに成長することとなっている人々を恋愛も絡めながら描いた作品。SF的テーマだけれども、舞台は1900年代中盤以降あたりを感じさせる年代設定となっている。ちなみに、私は原作を読んだことはないし、今後もおそらく読まないだろう。


運命

つまり、もとから天寿を全うすることはない人々、大人になれば、その提供相手の状況に従い、臓器を提供し、やがて、死を迎える、他者の生のために死ぬ存在。しかし、二人の間に真実の愛があると認められた男女であれば臓器移植までの猶予が与えられて二人で暮らすことが出来るという噂がある。
主な登場人物は3人。語り手である女性と、そして、その女性と同じように育ってきた男友達と女友達。すでに運命が定められた男女が、その運命に従順に従いながらも、すこしばかりの抵抗を試みようとする物語。それは、時に仲間への裏切り行為でもあるようで、そして、自己への猜疑心を持つようでもあり。しかし、運命は、彼らを死へと向かわせる。そして、それを目前としたときに、運命への最後の抵抗を試みるのだが。


情動的

あまりにも、情動的である物語であるのは確かであろう。そして、その理不尽なシステムに、短命の悲しさを感じるだけで、従順な態度をとる様子が、さらに感情をあおる。そのリアリティのなさが、しかし、この作品をファンタジーとして成立させているといってもいいのかもしれない。


読み替える

これの舞台設定について何かを言及することは意味が無くて、これを読み替えるべきなのだろう。定まった運命を前にして、どのように振る舞い得るのか。本当の愛とは何なのだろうか。そして、人間の感情とはどういうものなだろうか。しかし、この作品は、それらを深追いするための作品ではない。作者はそんなことは端からねらっていないのだろう。ただ、純粋に不条理の前にある愛を美しく描こうとしているのだと感じた。そして、そんな純朴な愛を前にしてみて、愛をしっかりと守るべきなんだと諭されているようにも感じた。


たまには

私のようなひねくれ者には、こういった筋の物語は、あまり感激しないのだけれども、ここまで、ストレートにこられるとかえってちゃんと受け止めてみたくもなる。
そういう意味では悪くない作品だと思う。


関連リンク:
映画『わたしを離さないで』公式サイト
わたしを離さないで - Wikipedia
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わたしを離さないで
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発売日 : 2006-04-22 (単行本)
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