ブリヂストン美術館にてアンフォルメルを堪能してみた



アンフォルメル

東京駅から少し歩いたところにある、ブリヂストン美術館は、その名の通り企業系の美術館。特に20世紀美術には強くて、かなりメジャーな作家の作品を収蔵している。そんなブリヂストン美術館で現在開催されている展示が、「アンフォルメルとは何か? ―20世紀フランス絵画の挑戦」と題された展示。アンフォルメルと呼ばれる美術スタイルは、シュールリアリズムや抽象絵画ピカソなどの手法などを踏まえた上で、それに続く形で登場したスタイル。
その名の通り不定形な絵画であって、画面上は、絵の具が塗りつけられた軌跡や絵の具の滲みのようなものなどが配置されているのみであって、形状が否定された作品スタイルをとる。
このアンフォルメルというスタイルは、ミシェル・タピエによって提唱されて、定義展開されたという側面が強い。


それ以前

展示の展開は、アンフォルメルへつながる系譜にある作品から始まる。モネやモンドリアンカンディンスキーピカソ、クレーといった印象派から抽象主義絵画へとつながる作品の提示により、アンフォルメルへと引き込んでいくという展示展開。その次の間から実際のアンフォルメル絵画が紹介されていく。


デュビュッフェ

やっぱり、面白い作品だと強く再認識したのは、ジャン・デュビュッフェ。幾重にも重ねられた絵の具の上にプリミティブな描写が重ねられている。その子供の絵のような様子と、一方で、重ねられた絵画の重厚感に、混乱と無垢さが混じり合う。ずっと眺めていたくなるそれ。そして、同じ展示室に飾られていた、ジャン・フォートリエは、私にとっては新たな発見。この作家のことは全く知らなくて、おそらく初めて見た。単純な形状に落とし込まれた作品は、単純な形状の中に、しかし。割り切れない形状が埋め込まれているという面白さをもつそれでもある。


マチウ

それから、改めて、この作家好きだなっておもったのは、ジョルジュ・マチウ。太い絵の具の円と線で構成される単純な図形。その、文字とも記号とも絵画とも取れる描写は眺めていて飽きることのない。その形状といくら対峙しても、何も生まれてこないように感じるのだけれども、しかし、それでもそこに何かを見いだそうとしてしまう。
そのほかにも、アンリ・ミショーの繊細な世界も面白いのだが、そのほかの作品の圧倒的な色彩のなかに飾られていたので、ちょっと堪能しにくい環境であった。


日本勢

アンフォルメルは少なからず日本人も活躍したジャンル。ただ、この展示では、具体をはじめとした日本勢の作品は少なく、菅井汲、今井俊満堂本尚郎のみ。なので、海外アンフォルメル作家の有名どころが一堂に会した展示というとらえ方の方がいいのだろう。
上記までに言及しなかったけれども、実際には展示されていた作家はそのほかにも当然いて、そのどれもが、面白い不定形を提示していた。そのアンフォルメルな世界の中に埋没するというのは、こういった集合展示の楽しさで、それぞれの作品を解釈しようとするのみならず、その世界そのものに浸るという楽しさもある展示だった。
あとは、ブリヂストン美術館お得意のザオ・ウーキーの作品も多く展示されていた。


最後の平面

このアンフォルメルあたりがある意味では、絵画におけるムーブメントの最終形態だったのかもしれないと思うところもある。これ以降から、立体やインスタレーションといった形態の展示も増えていき、表現メディアも絵画のみならずという展開を見せていったと思う。
その意味でも、最後に、形態からの逸脱によって、絵画を消尽させ切ったのがこのムーブメントだったのかもしれないとも思う。


見つめ直す

このような超抽象な世界を前にすると、日常の価値観による思考はとても追いつかず、その絵画を前にして、改めて、自分の根幹にある思想を引き出しながら、それぞれの作品と対峙することになる。そのことによって、思考に深くはまりこみ、日常の些事を忘れ去ることも出来る。そして、根幹との対話が見失いかけていた何かを思い出させてくれることもあると思う。だから、私は芸術というのは重要な存在だと思っている。
是非とも、そんな体験をしてみてはいかがでしょうかと、そう思う次第です。


関連リンク:
アンフォルメルとは何か? ―20世紀フランス絵画の挑戦 | 展覧会 | ブリヂストン美術館
アンフォルメル - Wikipedia
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