悲しみのミルクを観た



リョサ

クラウディア・リョサ監督による映画、「悲しみのミルク」を観てきた。ちなみに、この監督、名前からもしやと思ってみると、そのとおりで、ノーベル文学賞作家である、マリオ・バルガス・リョサの血縁で姪に当たる人物とのこと。同じく中南米ノーベル賞作家、ガルシア・マルケスの息子も映画監督だったりする。





トラウマ

この映画、トラウマとでも言うべきことが題材になっている。ペルーを舞台にして、集団にレイプされた母に育てられた娘が主人公。その母の恐怖の体験を聴きながら育ったためか、人一倍警戒心が強い。そして、その母が死ぬ。母の埋葬のためにも、稼ぎが必要であり、そのためもあって、彼女は自立の一歩を踏み出そうとするが、そこにそのトラウマがのしかかってくる。


コントラスト

おびえながら生きるその主人公とコントラストを描くのは、その周りの人々の貧しいかもしれないかもしれないながらも幸せそうな暮らし。結婚式を迎える親戚。子供たちの遊ぶ姿。しかし、主人公は、母の亡骸を埋葬するお金を貯めきることが出来ないままに悲しみと稼ぎのための使用人としての生活を必死に行き来する。


それでも

それでも、外に一歩出ることは何かを変えるのか。母から受け継いだ感情を歌に乗せて、自分の感情を抑える方法が、その歌に魅せられたご主人から真珠を引き出すことにつながる、理不尽な扱いを受けることにはなるのだが。そして、その使用人としての仕事場で出会った庭師の優しさに触れたことが、また希望を感じさせもする。


乗り越える

なにがしかの大きなトラウマを抱えて育っていった人間にとっては、普通に生活することすら、それは常人には理解しがたいほどの困難を感じるものである。しかし、それをなんとかしてでも乗り越えて生きなければならない。その困難さを、淡々とした視線と、普通の生活とのコントラストをさりげなく用いながら描いたこの映画は、なかなかの表現力だと思う。


音楽

もう一つ、この映画の印象に残るところは、その音楽。冒頭からいきなり母と娘の語りとも取れるような歌から始まる。この歌のみならず、様々なところで使われる音楽が、南米的な土着感とポストロック的な無機質感が混ざったようなとても印象的なサウンドを作っていたりと、南米的な色合いを適度に感じさせる音がとても印象に残った。サントラがもしあるなら、是非とも入手したいのだが。


ゆったり

まぁ、そんなところで、ゆったりとした映画で、感情をゆっくりと捕らえたようなそれ。なかなかいい映画だと思う。


関連リンク:
悲しみのミルク 映画公式サイト
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