さまよえる魂の依存関係 ザ・マスター



ポール・トーマス・アンダーソン

ザア・ウィル・ビー・ブラッドなどで知られる映画監督、ポール・トーマス・アンダーソン監督による映画、ザ・マスターを見てきた。
主演は、ホアキン・フェニックス


一人の男

第二次世界大戦末期、戦地へ送られようとする一人の男。しかし、戦地へ送られる直前に戦争が終結する。死をも恐れることを否定された存在が、今度は、自由の中で生きていくことを要求される。
恐怖に包まれた瞬間を生きたが故に、性欲とそして、アルコールが、彼の中に渦巻いている。


マスター

その男は、やがて、働き始めるが、なじめぬままに逃亡し、やがて、船にたどり着く。そこには、新興宗教の指導者「マスター」がいた。彼の作るスペシャルカクテルの力もあり、その後、この宗教指導者とそして、その宗教団体と行動を共にする。


どこまでが

そう、このように描写すると、しっかりとストーリーがあるように感じる。しかし、それぞれのストーリーには、不自然さが詰まっていて、そして、時に時間軸は前後する。そこで、感じさせられるのは、どこまでが本筋のストーリーで、どこまでが夢なのか?という疑問。確かに、冒頭、彼は砂浜で眠り込んだ。ということは?彼の中にある恐怖心が産み出した産物が、この映画の全てだと言うことなのだろうか?


反復

ストーリーの中には、いくつかの共通項が異なる場面で出てくる。彼が抱える恋人との別れというトラウマとこの宗教が対象としているトラウマ。写真を職業としていたことと後にマスターの写真を撮ると言うこと。冒頭からいきなり始まる性的描写と、職場仲間との関係、宗教団体における浮気的行動、突如みなが全裸で踊り始める、そして、最後に性行を繰り広げる彼。そして、何度となく現れる船の作る渦。
このことが何を意味しているのか?恐怖を抱えた彼が、その恐怖に襲われながらも、乗り越えようとする姿なのか。彼の中にある写真の意義。性的欲求が夢の中にあふれ出してくることは良くあることだろう。船が意味するのは、旅立ちだとすると、恋人との離別との関係性は。


トラウマ

もちろん、このマスターと彼の関係性と、そこにある狂気性というところが、この映画の主題であることは変わりないのであろう。そして、そこにあるのがトラウマであり、誰かの助けを必要とする人がいて、それは、マスターも彼も含めて、そして、それぞれに依存しあっている。そして、時にはアルコールにさえも。その依存心の発端は、どこから来るのかというと、それは、トラウマということなのか。


乗り越える

その、トラウマを適切に乗り越えることが出来なければ、我々は、狂気の渦の中に容易に落ちていくということか。しかし、少なからず我々の中には、トラウマが、そうとは強く認識していなくてもあり、そして、そのことが、我々の行動を支配し、そして、そのことが価値観を作り上げているともいえるであろう。どのように、そのトラウマとつきあいきるのか?
この映画の主題は、つまりそういうことではないのだろうかと。


夢と現実と

どこまでが、現実で、どこまでが夢なのかが、判然としない映画ではあるのだけれども、それをはっきりとさせることは、最終的には意味をなさない描きかたが、ここではされていると言っていいと思う。夢であろうが現実であろうが、我々の中にある、何らかの駆動源、This Strange Engine が我々を駆動しているのだと、そのことが見事に描き出された映画であると捉えるべきであるのだろう。


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