巨匠渾身の一作 この自由な世界で



ケン・ローチ

イギリスの映画監督 ケン・ローチの最新作、「この自由な世界で」を見た、シネ・アミューズは渋谷。
以下、ネタバレ気味です。


問題提議

これ、はっきりいって、スゴイ作品というのが、私の映画を見終わった後の印象。
ある女性が主人公。東欧などからの移民に日雇いの仕事を斡旋する会社に勤めていたが、理不尽な理由で解雇される。そこで、勝ち気な彼女は、親友の女性と仕事を斡旋する会社をつくるのだが・・・
シングルマザーである主人公の彼女の子供の問題。そして、仕事を斡旋する対照である、移民の人々との問題。さらに、就労ビザを持たない不法就労に対する行動の正義とビジネス。安価な労働力を求める工場と、しかし、仕事が欲しい移民や、不法滞在者。その狭間で、法律の限界のところで儲ける彼女ら二人。
そして、そこには、多くの現代の問題が映し出されている。
家庭の観点からすれば、シングルマザーでありながら、仕事を持つということ。そして、それよりも深刻なのが、移民の問題と、そして、日本でも近頃大いに話題である日雇い労働の問題。そして、斡旋によって、そのマージンを稼ぐ立場は、それは、悪なのか。
しかし、安値が尊ばれる市場主義のもとでは、工場は安価な労働力を例え違法すれすれでも要求する。その狭間で、最底辺の人々は、ここでも苦しみ、抜け出すことは出来ない。一体誰の責任なのか、この自由な世界で。


止まることの出来ない

しかし、勝ち気な彼女は、止まることが出来ない。問題に起こし続ける会社を運営しながら、危険な状況に追い込まれながらも、それでも、なお、辞めることが出来ない、時に、それは正義を超えて、会社の価値基準のみを追い求めて、もしくは、引くに引けなくなって。


示唆

これは、とても大きな示唆だと思う。この現代の経済社会では、経済の名の下に、確かに、それだけを求めて走り始めると、冷静な判断が狂う事はあるだろうし、そこに競争原理が働けば、負けることを避けるためとして、暴走が止まらなくなるという状況。


一体誰が

一体誰が悪いのか、そして、誰が犠牲者なのか。それとも、犠牲者を逃れるためには、加害者になるしかないのか。
移民の人々が、仕事を求めているのも事実かもしれないし、安いものをもとめる消費者がいるのかもしれないし、さらに上層にもっと大きなレベルで物事を操っている人がいるのも事実かもしれない。そこにあるべき正義とは一体何なのか、そして、ビジネスとは、しあわせの追求とは。
この映画の中でしあわせな家族が、彼女の両親だけだとすれば、それは過去のことということなのか。
この自由な世界で。


現代

先日紹介した、いまここにある風景もそうだったけれども、現代の世の中に何かを感じている人は多くいるのだと思う。しかし、その利害関係があまりにも複雑で、問題提議は出来ても、それをどうすればいいのかわからないという状況なのかもしれない。
なんとも、示唆に富むとても、すばらしい映画でした。


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