ICCが面白いことになっている



展開

さて、東京は初台のオペラシティーにあるNTTの美術施設ICC。おもに、メディアアートを扱っている施設なのだけれども、いろいろと紆余曲折があって、現在は基本は無料公開な状態に至っている。
そこに、久しぶりにいってみたらいろいろと変化があって面白かったので、少々長々と書いてみることにした。


夏休み

ICCは、かつては結構閑散としていて美大系やかなりコアな美術好きしかやってこないイメージの場所だったのだけれども、久しぶりに行ってみたら、ずいぶんと様子がかわってきていた。
夏休みと言うこともあってか、まず、お子様が大量にいて、親子連れでやってくる場所になっているのですね。で、ちょっとした科学の実験施設的な扱いなのか、メディアアートを子供たちがこねくり回して遊んでいるという、なんとも不思議な状況。もともと、メディアアートインタラクティブな物が多いから、確かに、それには適しているのかもしれない。それに加えて、いまでは、軽いデートコースになっているのか、既にもう行くところがなくなりつつあるカップルがどうにか見つけ出してやってきているような感じがする人々がまた、それなりにいたりする。
つまり、圧倒的に、メディアアートのコアなファンではなくて、一般の人々によって占められている状態。
これは、なかば、オープンという合い言葉が成功を収めているといってもいいのかもしれない。なにより、ほとんど人が入っているのを見たことがなかった併設のカフェも結構人が入っていたし、そもそも、施設が空転状態になっていないだけでも、かなりの意味があるとおもう。


肝心の

ただ、多分、これはジレンマなところで、肝心のメディアアートへの感心はどうだろうか、とか、メディアアートの主張はどうだろうかというと、そのあたりのメッセージは確実に埋没している。インターフェイスの面白さがどこか遊園地的な展開を見せているだけとも言えなくはない。もしくは、ちょっとした科学教室にすぎないのかもしれない。それぞれの作品は、それぞれその狙いであったり、仕組みであったりが細かく記載されてはいるけれども、人々の関心はそこにはなくて、ただ、それを体験するだけ、じっくりとそれを鑑賞することも、ねらいについて考察することもない。少しいじってみて、よくわからなかったらただ立ち去ると、面白い反応を示したら、もう少しいじってみると、ペットショップに遊びに来ているのに近いのかもしれない。
だけれども、これが本当の人々の反応であるのかもしれない。そういう意味では、システムというのは常に裏方であるのだから、やはり、これはこれで本来の姿にたどりつつあると言うべきなのかもしれないし、こういった人々の反応を冷静に観察して次への展開に生かすというのはとても重要な事だと思う。


違和感

もう少しべつの観点からすると、こうして、普通の人々がやってきて、そして、ちょっとした違和感を感じて、日常とはことなる空間と思想を感じとるという体験を提供しているということに、いまのICCの大きな存在価値があると言うべきのように思う。


作品そのもの

それは、それとして、いくつかの作品そのものに関しての私の感想だけれども、そういったインターフェイス的面白みを提供しながら、十分に主張している作品がどれだけあっただろうかというのが印象。メディアアートではなくて、ただのメディアあそびの作品が多かったように思う。そう、上記に作品の主張が埋没していると書いたけれども、むしろ、どの作品にも、主張が入り込んでいなくて、ひたすらに情報処理におぼれている気がしてならないのが本当の感情。
つまり、これはただ、センサーと可視化の大展開に過ぎなく、たまたまこういう処理をしてみましたって感じがしたに過ぎない部分が多々ある気がする。よく世の中にある、結局なにも生み出さない研究施設に近しい印象。
個人的には、これだけいろいろと処理が出来るのに、アイデア一発で、いろいろと組み合わせましたってだけの作品は、それはただ可能性が発散していくだけだと思う。可能性がどこかの特異点で固化してしまったかのようなそんな作品が出てくるべきだと思う。
特に、今回エマージェンシーズで展示されていた作品なんて、えっ、って言う感じで、それほどの
システムではなくて、ちょっとがんばってプログラムを書けば、あっという間に出来そうな作品だし、アイディア的にも、ひねりがない。むしろ、こういったネットに流れている情報をつかみ取って、作品にする場合には、相当のひねりが必要だし、何を狙って取り出すのかがはっきりしていないと、いろんな人が作っているMashup サービスよりもレベルの低い物しか出来ないと思う。アートであるのだから、違う視点を提供しないと。


まとめ

ということで、施設運営としては、いい方向にいきつつあると思うけれども、肝心の作品の充実がもっと深まることを期待したい。

関連リンク:
ICC ONLINE
SEUNZE.com -> ICC ONLINE | ICCキッズ・プログラム 2008 -> 同URL登録情報
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