幻のカルトムービー マラノーチェ
0.また暑い
また、夏がぶり返したような少し暑い一日。なんとなく、都内をいろいろとうろうろした末に、映画を見る事にしてみた。”マラノーチェ”は、渋谷のライズエックスにて。元々ミニシアターのなかでもさらに小さい劇場なのだけれども、私の見た会は多分観客が10人をきっていたと思う。とはいっても、なかなかいい映画と感じたので、ご紹介。
1.ガス・ヴァン・サント監督
この”マラノーチェ”を撮ったのは、ガス・ヴァン・サント監督で、結構知られた監督。一般的に知られている作品だと、グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちを撮っているし、コロンバイン高校の銃乱射事件を扱った作品エレファントでは、カンヌでパルムドールを取ったりしているし、NIRVANAのカート・コバーンを題材にした作品、ラストデイズもこの監督の作品。
2.幻の処女作
そんな監督の長編処女作であり、幻の作品とされていたのが、この”マラノーチェ”。今回は、リマスタリングがかけられての再上映になっている。
3.作品
作品は、ある男が移民の男に恋心を抱きながらも、その思いが届きそうで届かない状況を中心に描かれている。この中心話題に、不法移民である事だとか、貧しさだとかが、若干からんでくるが、同性愛であることや移民である事を特に政治的に扱うのではなくて、ただそのように生きているという現実として描かれている。このあたりがこの作品がとても美しいものにしていて、ある固有の問題としてではなく、誰の感情の中にも在るであろうある種の孤独とその反面としてある自由とがしみ出させている。結果として、ひずんだか感情に陥らず、自己と対面する事を可能にしてくれる作品になっていると思う。
4.孤独と愛と自由と
恋心を抱く男とその対象となる男。その男に近づけそうで、近づけない。だけれども、その感情をとどめる事が出来ず、時に振り回されながら、時に愚かしい行動を取りながら。求めながら、求められながら、自由でありたいという感情と手に入れたいという感情と。自由でありたいと思っているのは、求められる側も求める側も同じかもしれない。きっと、他人のことはわかりきれない、自己があまりにも自由を要求してしまっていることもあるし、他者があまりにも自由に見えるときもある、そのことに自らは気づかない場合も多いけれど。
5.不幸なのか
不幸なのだろうか、ここに登場する人々の境遇は。例えば、この男の遂げられない思いは、しかし、それだけで不幸なわけではないだろうと、終盤のシーンがそのことを物語っていて、このシーンが挟み込まれているというだけで、この作品のすばらしさがふくれあがっていると思う。決して完全に不幸な訳ではない、ただ、もう少し何かが欲しくなる、もしそれを手に入れる事が出来たとしても、すると、また何かが欲しくなるかもしれない、しかし今はすこしだけ不足している用に感じられて、決して何も手にしていないわけではないのに。
孤独を感じるかもしれないけれども、自由かもしれない。今手にしている物が、十分かもしれないけれど、不十分かもしれない。ただ、この現実を生き抜こうとしているだけといえば、そうでもあるし。
6.まもなく終了
まもなく終了なので、ミニシアター系のちょっと孤独感のある作品が好きな方は、見に行く事をお勧めします。
ただし、淡々とした作品であり、白黒映像なので、味わう作品が苦手な場合はつまらないと思います。
関連リンク:
CINEMA RISE MOVIE INFO.
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