崩壊する感覚を捉える 残雪



1.蒼老たる浮雲
中国の文学者、残雪による中編・短編集「蒼老たる浮雲」を読んでみた。
この作家の他の作品と同様、既に廃盤で中古本として探すしか手はない状態になっている作品で、しかも、ものによっては結構な値段になっていたりする。


2.崩壊
もともと、この作家の作品は、摩訶不思議というのか、現実的な空間を利用しながらも、そこで非現実的な現象が発生させるという物語の展開を示すのだけれども、この作品も同様。
で、特にこの作品集に納められた作品に感じられるのは、崩壊の感覚。いずれの作品にも、家族という共同生活の部分が出てくるのではあるが、その全てが様々な理由で崩壊に向かっている。そして、登場人物自身も崩壊つまり、死に向かっているようでもある。
そこには、希望のような物は感じられない。ただ、崩壊に向かう。猜疑心と、監視と、虚偽と。そして、人間の中に、もしくは、人間の生活空間に、生物が大量に侵入しはじめて、そして、完全なる崩壊にいたる。


3.生い立ち
この作家の生い立ちは結構悲劇的なところがあって、幼少の頃に家族共々、政治的に冷遇を受けるという経験を経ているそうなのだけれども、そういったことも影響しているのだろうか。
儚い夢や希望のような物が、生まれようとする瞬間にすでに否定されていて、そして、そこには、ただばらばらになった人間関係だけがあり、そして、ばらばらになった人格だけが存在するようでもある。
どこか、とても痛々しい感覚を感じさせられる作品集。我々の希望とは一体何ものなのだろうか。


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蒼老たる浮雲
発売元 : 河出書房新社
発売日 : 1989-07 (単行本)
売上ランク : 554964 位 (AMAZON.co.jp)
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