ニキフォル 知られざる天才画家の肖像:東京都写真美術館ホール



1.Nikifor
ニキフォルは、アール・ブリュットの文脈で語られることの多い画家であり、いわゆるアウトサイダーアートとして分類される画家の一人。


2.映画
そのニキフォルの晩年、ある画家との遭遇とその後の展開を描いているのが、この映画。
映画の作り方としては、無理に山場を持ってきたり、感動の展開に押し込もうとしたりというところが無くていい。ちょっと、話しの展開のつながりがわかりにくいところもあるが、これもこれで一つの撮り方という感じ。特に、ニキフォル個人の存在と、ニキフォルに何らかの形で関わる人々の感情の揺らぎが、丁寧に描かれていていい。あまりに誇張のない丁寧な描き方過ぎる故に、最初は印象に残りにくいけれど、徐々に感情に入りこんでくるという感じ。反面映画としての面白さに欠けるという感じもするが、そのあたりは、見る人の嗜好によるかもしれない。


3.現実と芸術
少し、芸術とは何かと考えてしまう。ニキフォルは病気を持っているということもあり、やっかいな扱いを受けるという側面がある。もし、彼に絵が無かったとしたら、もしくは、それを芸術として評価しなかったとしたら、その存在は一体どのようであったのだろうか。
一方で、ニキフォルのようなアウトサイダーアートに対する人々の接し方というのは一体どうあるのだろうか。アートはあくまでアートであって、その人の背景などは関係無いといえばそうだが、しかし、アウトサイダーアートの背景には、確かに様々な現実がある。アートだけを抜き出して良いのだろうかという感覚が、どこかに残るが、しかし、それがまた正しい感覚なのかどうかも私にはわからない。難しいところ。この映画はそのあたりまで描かれているので、すばらしいと思う。
それから、こういったアウトサイダーアート作品に魅了されるのは何故だろうかと。それは、どこか鑑賞者側にある夢想というか、何かに対するあこがれの反映のような気もする。もしかすると、アウトサイダーアートの中に何かもっと別のものを見ている側面があるのではと。しかし、そういった要素も含めてアートの存在意義なのかもしれない。
ちょっといろいろと考えたくなる作品であった。


関連リンク:
映画『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』公式サイト
東京都写真美術館
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