ルソーの見た夢、ルソーに見る夢:世田谷美術館



1.砧公園
東急東横線用賀から徒歩20分、バスで10分くらいのところにある世田谷美術館ルートはこちら)は、砧公園内にあって、なかなか素敵な環境。そこで、現在素朴派を代表する画家、アンリ・ルソーとその作風に似た作家の作品を集めた展覧会が実施されています。「ルソーの見た夢、
ルソーに見る夢」2006.10.07〜2006.12.10。もともと、世田谷美術館はルソーをはじめ素朴派の収集に力を入れていて、世田谷美術館開館20周年記念として今回の展覧会が開催されている。


2.素朴派
アンリ・ルソーは、プロとして報酬を得ての作品は残しておらず、いわばサラリーマン画家。もともと、技術的にはそれほどレベルの高くなくて、何度もコンペに落選したことでも有名ではあるが、逆にその技巧的ではない画風と、それから、南国風の絵画がピカソなどにも支持された。


3.やはり
展覧会の構成は、最初にルソーの作品があって、その後素朴派に分類されるその他の画家、それから、ルソーの影響が濃く現れている日本の画家、さらに、ルソー的な者を感じさせる作品が展示されるという構成。
ルソーの作品。やはり、生を間近で見ると技術的には確かにうまくはない。生で細かいところまで見ると、一見乱雑な絵でも絵がうまいのだと感心させられる場合がよくあるが、ルソーの場合はそうではない。やはり、技術的には高くない。ただ、その崩れたバランスがある種の雰囲気を作るところがあって、例えば、バランスの悪すぎる遠近法などは結果的には強い印象を与える構図になっている。


4.いまいち
ルソーの作品自体には、ある程度印象に残ったが、その後の作品の展示がどうもいまいちな感じ。素朴派と呼ばれる画家たちの作品にしても、確かに、構図的な類似性は感じられるが、それで素朴派で良いのだろうかという印象がぬぐえないというか、どうも感情に入ってこない。正直いって、ルソーはルソーだけで良くて、素朴派としてくくるのは少し難しいのではと感じた。ルソーの良さは、技術的には未熟ながら、それを描き続けたこと、そして、それが結果として評価されたことにあって、それは唯一無二であるからこそだと思う。ルソー以外のここで展示されていた作品でも、それなりに名の通った画家のものや、絵単体としては良いと感じるものもあったがルソーという名の下にまとめられるとその価値が今ひとつ感じられてこない印象が残った。


5.再び素朴派
ルソーの作品というと、結局どちらかというと広義のアウトサイダーアートだと思う。美術的な意味では、確かにレベルは高くないが、そうであるからこそ、時に一方向に傾斜しすぎて袋小路にたどり着いてしまう専門的世界に対するアンチテーゼとしての意味、ただ、絵を描くということの意味としての重要さがあると捉えることも出来ると思う。そういう意味では、例えば、グランマ・モーゼスなどとも近しい立場というところがあるようにも思う。
私自身は美術史などを教育機関では学んでいないので、私の勝手な意見なので、専門家からいわせれば違うのかもしれませんが。


6.ついでに、日本のパブリックアート
さて、2階の展示場は普段はこのルソーらの作品が置かれた常設展示だが、今回は、この2階で日本のパブリックアートが紹介されている(別料金で、2006.11.05〜2006.12.24)。これが実は結構興味深い。日本各地にある屋外美術館や商業空間におかれた美術作品(オブジェ)やそれに関わる運動を紹介する展示。主に写真による紹介ということなので、作品を鑑賞するという楽しみは無いのだが、情報としては非常に興味深い。広島記念公園のモニュメントから、大阪万博、森ビル、養老天命反転地モエレ沼公園などなど。これ、結構いい。折角だから、ここで使用したものをデジタル化してWebにアップして、さらにリンク集をつけてポータル化してくれないものかとも思う。これは、かなり貴重でいい。


7.ちょっと、別の角度から
平日に美術館を訪れた。すると、どこか印象が違う。特にここ世田谷美術館は砧公園と隣接していることもあってかもしれないが。普段の会社生活では接触することの少ないタイプの人々がいる。車いすで介護を受けながら公園を散歩する人々、ハンディキャップドである人々とその人たちをとりまとめている人々。普段、高速生活のなかで、次の何かを次の何かをと何かに追われている生活からは、完全に対局にある世界。世の中は、このようにもあるのだと再認識する。そういう意味では、この素朴派というアンチテーゼというのはどこか重なってもくる。そして、それを収集している世田谷美術館の方向性というものも。最近では、弱者という表現をするのかもしれないが、むしろ、生活者と呼ぶべきかもしれない。一方で、競争社会側は、非生活者なのかもしれない。そう考えると、ルソーの価値が反転してくる。生活の中にある絵画、一方で、様々な表現を求めて技法とイメージの展開を模索する絵画は一体何処にあるのか。しかし、留まることも出来ない。何故かは、わからないが。すると、やはりアンチテーゼが必要になってくる。

関連リンク:
世田谷美術館
using 'del.icio.us'
関連サーチ:
アンリ・ルソー(AMAZON.co.jp)
アンリ・ルソー(Google)
アンリ・ルソー(Technorati.jp)
アンリ・ルソー(del.icio.us)
Powered BY AmazoRogi

アンリ・ルソー
発売日 : 2002-04 (単行本)
売上ランク : 560487 位 (AMAZON.co.jp)
評価平均 : /1人
少年の心を持った天才
Powered BY AmazoRogi Data as of 2006-11-19
See detail & latest visit AMAZON.co.jp