私たちの道

そこには、異なる。今を。渇望する。充足している。していた。しているはずなのに。そうではない。なにも間違ってはいない。だから、言い訳を探す。言い訳を探す。小石の裏側に、小枝の陰に、壁の根元に。もう少し、掃除でもしようか。よく見れば、そのあたりは、確かに、汚れている。もっと、きれいになれば、きっと、そこに戻るはず。そのようになるはず。きっと。
 伸びていく道。ある程度の横幅をもって。一歩、横に行けば、そこは、道なのだろうか。境界線があいまいに。さらにもう一歩、横に行けば、そこは、もう道から外れたことになるのだろうか。どこまでが、どこまでで。でも、すぐに戻ろうとすれば戻れる。それとも、もっとその境目を明確に、掃除でもして。


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 誰もが歩く場所の、その正規分布。中心は、少しずつ位置を変えながら、その境界線も少しずつずれていきながら。ここは道だったはずなのにと、しかし、振り返ってみると、そこには道がなくて。また、別のほうに伸びている。なんで、こんなことになってしまったのか。だから、もっと掃除しないといけないと。その境目を明確にして。そうしなかったから、道からそれてしまった。道がそれてしまった。
 そして、何かが足りない今が。なにも間違っていないのに。道のほうが、曲がって行ってしまった。そうならないように、そんなことにはならないように、今度こそは。そして、そのためには、まず、道を戻さなければならない。でもどうやって。例えば、あの小石の裏側に、あの小枝の陰に、あの壁の根元に。そこにきっと過ちがころがっている。だから、それらを一掃するように。全員の力でもって。みんな、同じ方向を向いて。
 どちらの方向を向くべきなのだろうか。この道は、それでも続いている。その中心軸を少しずつ変えていきながら、進んでいく。それにしたがって、歩く側が変わらなければならない。その道がずれたのかどうかすら関係なくて、その道の向こう側に行こうとする場所があるだけで、そして、そこに行くために都合のいい道がそこにあれば、それを選択すればいいだけで。
 その方向は、違うのだから。みんな、同じ方向を向いて。大革命のような重要なことなのだから。もっち、道の境界線をはっきりさせて、そして、どんな細かいものでも、おろそかにしないようにして、同じ方向を向いて、まずは、この道を守らなければならない。そして、きっと、この渇望した感じは、充足へと変化するだろうから。
 いつまでも、足りない。だからもっと、境界をはっきりさせないといけない。正規分布ではなくて、矩形波のようになるように。しかし、どこまで行っても、フラクタル図形でしかないというのに。
 だから、そっと、こちらの方向へと歩き始める。むしろ、境界線がはっきりしない側へ。いや、境界線がどうかなど、それは重要なことではない。どこへと、向かっているのか。あの太陽の方向へ、あの山の方向へ、あの川の方向へ。私の求める美しき人のいる場所に向かって、私自身をむしろ変化させて。そう、それでもたどり着きないあの場所に向かって。必然的に同じ方向へと。私たちの道は、あちら側へと向かっている。