The Pineapple Thief の新作 Someone Here Is Missing のジャケはポストイットマン

The Pineapple Thief

The Pineapple Thief は英国のプログレ系ロックバンドで、エレクトロポップなメロディーと共に、変則的なリズムを操る不思議な雰囲気を持ったバンドで、ポスト=プログレッシブロックサウンドを展開する。そんな The Pineapple Thief の8枚目ぐらいになるスタディオアルバム "Someone Here Is Missing" が、リリースされたので早速聴いてみた。
ちなみに、彼らの初期の作品は、廃盤になっていて入手困難なので、初期の彼らのサウンドは私もよく知りません。

Storm Thorgerson

で、このアルバム、まず目を引くのはそのジャケット。ポストイットを体中に貼り付けた人（男？）が窓辺に佇んでいるという不思議な様子。そして、このジャケは、なんと、Pink Floyd をはじめとして、様々なアーティストのジャケットアートワークを手がけている巨匠 Storm Thorgerson の手によるもの。しかし、最近 Biffy Clyro など若手でしかも結構渋いところのバンドのジャケットを Storm Thorgerson が手がけているのは面白い。

内容

で、作品のほうですが、ベーシックに流れるサウンド傾向は、前作までを踏襲したそれで、ポストロック的な無機質さを感じさせる部分に、ポップさやハードロックな傾向を混ぜ合わせつつ、変拍子や転調によって、引っかかりのある不思議なサウンド。Porcupine Tree 系サウンドではあるものの、より無機質なというのか、透明感があるという印象で似て非なるそれ。
特に変拍子系のサウンドというと複雑にごちゃごちゃとしていた物量投入型の大仰なサウンドが多いのだけれども、このバンドがここで展開しているサウンドは、変拍子をつかったとしても、あくまで機械的でクールなサウンドとして処理しているのでとてもクールでシンプルなサウンド。また、打ち込み的なリズムも躊躇なく使ってきているので、いわゆるプログレサウンドという観点からだと大いに味わいが異なる現代的な音。
そんな音を全編にわたり展開しながら、時に激しく、時に愁いを込めて、感情豊かに描き上げたアルバムに仕上がっている。

名曲"Barely Breathing"

そして、個人的にはこのアルバムのクライマックスと捉えていて、さらに、この1曲だけでこのアルバムの高評価を決定づけた曲が、5曲目の "Barely Breathing"。フォークタッチともとれるようなアコースティックでシンプルなサウンドにのせた、もの悲しいバラッドな曲なのだけれども、出だしの数小節のみで鳥肌が立って、そして、泣いてしまいそうになるほどの美しい逸品。
プログレ界にも数々の名バラッドが存在するけれども、その中でもこれほど美しいバラッドは無いのではと思うほどの名曲。
変拍子を含む変則的なリズム感のサウンドで展開されるわずか3分40秒程度の曲なのだけれども、これが本当に美しすぎる。だまされたと思って、この曲だけでもダウンロードで購入して聴いてみてほしいとさえ感じるところ（ということで、iTunesリンクです）。
あまり、アルバムの特定の曲だけを繰り返して聴くと言うことをしない私なのだけれども、この曲は別格で、最近何度となくこの曲を繰り返し聴いている。

アルバム

というところで、この曲があまりにも気に入りすぎて、この曲について書けば、もうこのアルバムについては十分ではとさえ感じてしまうところ。アルバム全体としては、激しさともの悲しさが交互に現れてくるような展開なので、じっくりと聴き込みたいところ。逆に交互に現れてくるので感情に浸る暇は無いとも言える。
ということで、お薦めの一枚です。

Kscope

で、この作品は、"post progressive sounds" をお題目に上げるレーベル Kscope からのリリース。Anathema の新作もこのレーベルから出る（出た）し、今後はさらに、Lunatic Soul や Blackfield の新作のリリース予定らしい。この作品のみならず、注目の作品が続々とリリースされるので、注目すべきレーベルです。