Original ASIA Live @東京厚生年金会館

1.再び
プログレ大御所バンドを経た人々が、集結して結成されたスーパーバンド、ASIA。プログレ・ポップの代名詞といっても良いかもしれない。爆発的セールとシングルヒットをとばした人たち。そして、25周年。懐古趣味と揶揄する人もいるだろうし、いまさら何が出来るのかという人もいるだろう。しかし、彼らはやってきた。

2.衰えない
一時期その声がもう出なくなったのではと思わせた、John Wettonの声が、とても張りがあってよく伸びる。指の動きがもはや付いてこないのではと懸念されたSteve Howeの指が高速で這い回り、あの Steve Howe 節を見事に繰り広げる。結構トリッキーなドラムソロと高速ドラミングを見せつける Carl Palmer。体型が John Wetton 化し始めている Geoff Downes の繰り広げるきらびやかなキーボ−ドワーク。そして、少し怪しいところもあったけれど、見事にかみ合ったアンサンブル。
その音で、ただの懐古趣味ではないことを証明した彼らはすばらしい。ただああだこうだというのではなく、ちゃんとアウトプットで証明する姿は、美しいとしかいいようがない。

3.度肝を抜く
選曲は、オリジナル・ラインナップASIAの曲を中心にだが、それに加えて、各メンバーが在籍したバンドのカバーをいくつか。カバー曲の選曲がすごい。まずは、YES/Roundabout。John Anderson のボーカルパートをどう料理するのかと思いきや、声質こそ当然違うものの、John Wetton が歌いきる。このあたりにも声の調子の良さが出ている。そして、E.L.P/Fanfare for the Common Man。本来いないはずのGuitar が入るのだが、これが結構かっこよくアレンジされていて、やっぱり、テクニシャン揃いのバンドはインストを見事に決める。さらに、King Crimson/In the Court of the Crimson King。各パート演奏スタイルが、本家とは結構違ったりするのだけれど、うまく ASIA アレンジになっていて、これもこれでいい。そして、さらなる衝撃は、Buggles/Video Kill the Radio Star。さすがにポップヒットだけあって、会場が盛り上がる。拡声器越しに歌う John Wetton。テクノポップのはずが生バンドアレンジ。これもまた結構かっこいい。ってところで、このへんのカバーもとってつけたカバーではなくてしっかりとアレンジされていて、完成度が高い。これは聴く価値がある。
あとは、ASIAの代表曲を網羅というところ。

4.Sold Out
これ東京5公演あるはずだけれども、いずれも Sold Out かほぼSold Out。人気もやっぱり高いのですね。で、客層もプログレどっぷり派というよりは、ポップヒットを知っている人々という感じで、30代が多かった印象。普通のプログレ系だとやっぱり40代になるので、少し客層が違うのかもしれない。

5.音がいい
あとは、私の陣取った席が後ろの角という悪条件かと思われるところだったのだけれど、意外とこの席はいい。座席の傾斜のつけかたも良いので、ステージ丸見え。しかも、懸念される反射音もそれほどなく、席のわりにいい音で聴けた。どころか、後ろの角なので、ゆっくりくつろげてうれしところ。

6.良いライブです
総括すると、やっつけ仕事じゃない良いライブだったというところ。進化した Carl Palmer のソロだけでも見る価値があったかも。

7.しんみりと
こういう良いライブを聴くと思うこと。ロックは世界を変えると本気で思っていた人々。しかし、確かに、ロックは世界を変えることは出来ていないかもしれない。だけれども、ロックが個人を変えるということはやっぱりある。こういうライブを見るとそれだけで力づけられる。特に、あの年であの演奏をするなんてと思うと。そう、ロックは個人を変える。いや、世界というのが幻想の固まりであって、個人しか存在しないと、そして、その個人を変えるのだと、そういうべきかもしれない。

関連リンク：
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