残雪:突囲表演

中国の作家残雪の突囲表演。
不思議な文体が故に中国の女性カフカだとかもいわれるらしい作家残雪。
この作品は、氏の作品にしては饒舌な方だということらしい。
私自身は、この作品が初なのでわからないですが。
内容は、とある街での比較的新参者が巻き起こす事件と
それに対する街の人々の反応ぶりを描いたというところ。
そんな意味では、少しガブリエル・ガルシア=マルケス予告された殺人の記録
思い起こさせたりもする。
が、それとはまた近くて遠い作品。
文章構成が特殊で、物語が時系列に進んでいって、何かが起こってことの顛末があってというものではなく、
事件の主人公となる人物および事件の中心に近い人物のキャラクタを特徴的に表すような出来事を
まず、描いておいて、その後、事件に対する街の人々の反応ぶりを描く。
そこから、またことが起こって、そのまま終演へと向かう。
事件そのものはほとんど描かれないと言っていい。
ある意味では、その事件そのもの自体の重要性の低さがそこに現れているといっても良いのかもしれない。
この作品の中にある最大の特徴は、変化し続ける人々の反応だと思う。
それは、なにも村という古くに根ざす共同体の身勝手さだけを表すのではなく、
新参者としての立場となる側の人間もそうだ。
作品の中で何度となく状況や立場の逆転が起こる。
古くに根ざし伝統に支えられていると思われる場所でさえ。
この柔軟さという人の面白さを痛烈に感じさせられる作品ともとれた。


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中国文学部屋

魂の城 カフカ解読
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posted with amazlet on 06.02.26
残雪 近藤 直子
平凡社 (2005/12/06)