戦車という密室から眺める戦争 レバノン



レバノン

ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞をした映画、レバノンを見てきた、渋谷はシアターNにて。
この映画は、そのタイトル通りに、レバノンの内戦を舞台にした映画。サミュエル・マオス監督というイスラエルの監督により描かれた作品であり、この監督もレバノン戦争に従軍していたという。
ちなみに、ここで舞台にしているのは、1982年ごろのレバノン戦争だそうだ。





レバノン内戦

一応、歴史的にはレバノンはどうなっているのだろうかということで、Wikipedia などで調べてみた。レバノンは、元々は、複数の宗教、宗派が混在したままに成立していた国家だった(というよりは、近代国家の概念がなかった)。しかし、中東の複雑な政治状況の陰には、世界大戦にまつわる列強の勢力争いが必ずあるというのは、レバノンも同じで、フランスにより独立を促された国家。それは実体の国家勢力とは異なる思惑で行われたが故に、建国当初から混乱を極めている。
結果として、レバノンは近隣国のシリアやイスラエルパレスチナの影響をも受けながら、常に内戦状態にあるといってもいいような状況の様子。現在は比較的安定しているようにも感じるのだけれども、実体については私自身は十分な情報を持っていない。


政治色はなく

ということを踏まえてこの映画はどうか?と、展開しようかというところだけれども、この映画、確かに、レバノン戦争を舞台にしているが、あくまで戦争の極限状況を描くための舞台としてレバノン戦争を利用したというレベル。アラブ的なことやイスラエル的なことなどの政治的な要素は舞台説明以上には登場してこない。なので、純粋にその極限状況を感じることの出来る映画となっている。


戦車の中

この映画の主な舞台は、ある部隊の戦車の中。ある日、戦地へと赴く指示を受けた部隊。そして、その部隊に同行する戦車。その戦車に乗り込む4人がレンズ越しに眺める戦争。戦地の辺縁から、徐々に戦地のど真ん中へと進軍していく。そして、4人はより悲惨な現実にさらされていくことになり、精神状態が乱されていく。殺すことの恐怖と殺されることの恐怖がその4人にのしかかる。そして、誰が仲間で誰が敵なのか。どの誰までを殺してしまわなければならないのか。そして、生きて戻ることが出来るのか。


密室

別の側面では、この映画は最近地味に流行っている密室ホラーサスペンス的でもある。戦地であるが故の限られた情報、さらに、戦車の中であるが故に外界からの情報も限られている。戦争の大義はもとより、現在自分たちがどこにいてどのような状況に置かれているのかさえわからないままに、しかし、死の恐怖に包まれているという。
私自身には、この側面のほうをより強く感じ、戦争に対するシリアスな問いかけはあまり感じることは出来なかった。また、流血シーンなども遠慮無く描いているのでなおのこと密室ホラーサスペンス映画と感じた。


そこそこ

そんなこともあって、正直言って、もっと示唆に富んだ映画ではないかと期待していたのだけれども、私自身は、この映画にはそのような要素は感じなかった。あえて政治色を排除してエンターテイメント的な緊迫感を重視させたのかもしれないけれども、戦争の持つ様々な矛盾への言及とはならず、あくまで恐怖を描いたのみの映画となっていると感じた。それはそれで悪くないと思うのだけれども、ちょっと期待値をあげすぎていたので、もう一つだったかな。
とはいえ、結構絶賛されてもいるので、私がうまく感じ取りきれなかっただけかもしれない。


関連リンク:
レバノン
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