ミヒャエル・ハネケ監督による「白いリボン」を観た



ミヒャエル・ハネケ監督

さてさて、年末差し迫る中、映画でもということで、ミヒャエル・ハネケ監督による「白いリボン」を観てきた。
ちなみに、ミヒャエル・ハネケ監督はオーストリアの映画監督で、過去もカンヌ映画祭をはじめとして多くの受賞歴がある。





白いリボン

白いリボンは、第一次世界大戦直前のドイツの小さな村を舞台とした映画。全編白黒映像による作品で、2時間半近い大作。
この映画、寡黙なのです。そして、そうであるが故に不気味でもあるのです。実質的には地主によって支配されている村。そこで、小さな事件が立て続けに起こる。医者の落馬事故、小作人の妻の死。収穫祭の一方で、疑念は払拭されぬままに、さらに事件が発生して、憎しみが憎しみを呼ぶ。畑が荒らされ、子供が傷つけられる。宗教により規律が保持されるはずの村。しかし、一方で、倫理的には正しくない行為も行われる。一見のどかな平穏な村に広がる不穏な空気。それは、まるで伝染病でもあるかのように、様々なところで絆が緩んでいく。だれが、医者の事件を起こして、誰が小作人の妻を殺して、誰が、子供を傷つけたのか。それら疑念を背景に抱えながら、さらに小さな事件が起こり続ける村を描いた作品。


誰が何を

誰が、何を実行したのか。村全体に、不穏な空気が漂い、最初は眠気すら感じさせられたそのゆったりとした展開が、いつの間にか、緊張感の満ちた雰囲気に変わり、様々な場面に疑わしさが感じられ初めて、たとえば語り手の教師の恋愛という最も平穏であるはずの情景にすら、どこか不気味なものが感じられもする。村という閉塞した空間。子供たちの言動にすらなにやら疑わしさが漂う。強烈な描写はそこには無いにもかかわらず、そこにある穏やかならぬ空気には、一種のサスペンス映画のような雰囲気さえも観じられる。


戦争

しかし、その様々な疑念に対して、何一つ明確な結論が出ないままに、戦争が始まり、その戦争が、その疑いに満ちた村も包み込む。
そして、様々な場面の様々な登場人物の言動に対して、そして、それぞれがその後たどった運命に対して、言及されないままに映画は終演する。音のないエンディングロールにある不気味さは、その村の不気味さとともに戦争の足音の不気味さを重ねているのか。


確かにこの映画はある意味衝撃的。ゆったりとした展開に、観ている方もだれてくるような気分にもなるのだけれども、その一方で、何も解決されないまま、後半になればなるほど不気味さが増す展開には、歯切れの悪いすっきりしない終焉後の気分を産み出す。すごい映画というべきなのかどうか。
そして、そこにある村の不気味さ。昨今、田舎の良さを、つながりの良さを主張する人も多いが、ここにある村の不気味さというのは、田舎の一つの側面ではあると思うし、そこから、解放されようとしたのが、近代の流れでもあるだろう。


隠喩

もしくは、様々な疑念がありながら明らかにならず、牽制しあいながら、その狭間で様々な別離が起こるというその展開が、そして、このエンディングにつなげられている戦争へと向かう状況の隠喩のようにも感じられる。
私自身、これが名作なのかどうか、判断しかねているのだけれども、思いの外衝撃的な作品ではあると思います。


関連リンク:
映画「白いリボン」公式サイト
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