イタリアからの春の歌：バンコ紹介5回目

5回目

イタリアン・ロックバンドバンコのアルバム紹介も5回目。

春の歌

初期の3枚がやっぱり、彼らの印象を決定づけているところがある故に、それ以降の作品は徐々に印象から薄れていってしまっているというところがあるかもしれない。その初期の作品とは少し趣を異にしながらも、ファンから愛されているアルバムが、今回紹介する”春の歌”で通算8枚目、79年作品。

イタリアの歌

この作品では、それまでみせていた彼らの重厚でめまぐるしく意外性のある楽曲展開からは一転して、とても穏やかでシンプルな作品に仕上がっている。そのタイトル”春の歌”がまさにぴったりくるという感じで、ジャコモの穏やかなボーカルを主軸に、比較的アコースティック感覚のあふれる穏やかな春の昼下がりという印象のする作品。プログレッシブ・ロックのもつ革新性や意外性といった要素はないものの、この穏やかで美しい世界観は、非常に心地よい雰囲気を作り出している。

時代の狭間で

よりクラシカルな方向性をみせたり、世界進出を図ったりしながらも、時代の渦に巻き込まれながらのバンド活動だった時代。そこでのバンコの回答がこのアルバムであった。
この後に、さらなるポップ化へと突き進みながら、さらに方向性が定まらない活動へと進展していくのであるのだけれども、そんな時代の狭間に生まれた奇跡的な美しき名作がこの"春の歌"。気合いを入れてというよりも、むしろ心の平静を求めてこの作品を聴くと、落ち着く事が出来ると思う。