統計学を拓いた異才たち

1.とっかかり
何となく本屋を歩いていると、本書「統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀 著者;デイヴィッド サルツブルグ」が目に付いたので手に取ってみる。何故目に付いたかというと、近頃、様々なデータに触れる機会があって、明らかにこれらは統計的に処理してパラメータに適切な味わいをつけたり消去を行うことによって別の側面を表示させてやるべきでは無いだろうか・・・、ということをうろうろと考えていたので、このタイトルに見事に引っかかったわけである。


2.おおざっぱな感想
で、まずはおおざっぱな感想ですが、全体的には、数学関係書籍でありながら、数学にそれほど詳しくなくても、読めるというか、逆に数学的なものを期待しすぎるともう一つ足りなく感じるかも。とはいいつつも、数式を使わないが故に言い回しがややこしくて、理解が困難なところがあるのも事実。ただ、細かい内容の理解ではなくて、理系ドキュメンタリーのスペクタクルを感じたいというのであれば、問題はないだろうし、統計の発展がうまくまとまっているので、理系の人にも読みがいは十分にあると思う。


3.もう少し詳しく
統計学の創始期から、順番にそれが爆発的に広まっていく様を事例も引きながら紹介していくという作品で、統計学が発展していく様のダイナミズムがドキュメンタリー的な面白さがある。一方で、多くの事例を扱っていると言うこともあってか、様々な事例の紹介がどこか、中途半端で終わってしまうというか、で、それでどうなったのっていう統計学の導入による最終効果の部分が不足しているようで、ちょっと消化不良感が残る。また、何度かたとえ話が表現のために使われるのだが、そのたとえ話の使い方も少し不適切なように思うところもいくつか。なところで、名著まではいかないという感じ。
この作品のもっとも重要なところは最終章


隠れた欠点のある崇拝物
である。ここに書かれている内容を、それ以前の章で紹介されていた内容を再び思い出しながらかみしめてみると、未来が見えてくるように思う、いや、現在が見えてくるというべきだろうか。


4.個人的な思い
いずれにせよ、この統計学の展開は、明らかにコンピュータの導入で次のステージへ進みつつあると思う。様々なものがデータベース化されてコンピュータ処理が容易になっていく現状と今後を考えると、この統計学の重要性はさらに今後増していくと、個人的には思っている。なので、非常にタイムリーなところでの統計関連まとめ書籍だと思う。そして、今後様々な分野でさらなるデータのデジタル化が起こって(現在進行形)、その処理技術と処理アルゴリズムが開発されて(現在進行形)、数学的手法も開発されていく(現在進行形)のではと勝手に想像してみる。となると、以前の記事でも述べたことと関連するが、様々な物事へのデジタル革命に対して、既にぱっと見ただけでもこれだけネタが揃っているということであり、既にデジタル革命はそれなりのレベルまで進行していると捉えるべきだと思う。デジタル革命とはつまりデータのメタ意味の変化である。そして、近頃強く思うのは、マトリックス演算の力強さである。学生時代は全く気づかなかった愚かさであったことが悔やまれる。


5.余談
本書の訳者後書きによると、

ネット書店のアマゾンで数理統計学史の新刊を探していた際に、話題となっていた本書を見つけたことに始まる。〜(中略)〜インターネットで調べると海外での反響の大きさに比べて・・・
ということで、本書とは関係はないが、今読んでいる別の本(また後々ここに上げますが)でも似たような話があって、ネット社会もじわじわとリアルの方へ来ている感じです。


統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀
発売日 : 2006-03 (単行本)
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