二つの世界 ベトナム出身アーティスト ディン・Q・レ の展示を見た
ディン・Q・レ
現在六本木森美術館にて開催されているベトナム人アーティスト、ディン・Q・レの個展を見てきた。この人物は、ベトナム人ではあるけれども、生まれのいろいろな紛争などの都合でアメリカに亡命後アーティストとなった人物。
であるがゆえに、祖国であるベトナムに対する視点と教育などを受けたアメリカの視点と二つの視点がそれぞれにクロスしながら批評的な表現でもある。
アメリカ
やはり、アメリカのベトナム人であるということから、ベトナム戦争という事例は扱わないわけにはいかない出来事である。アメリカに暮らす以上、常にベトナム戦争をアメリカの視点で捉えた表現に多く触れることになる。そして、そこには、アイデンティティとしてベトナム人がある彼にとっては、そこには違和感を感じ、アメリカ視点をそのまま反転させてベトナム視点とした表現を展開することになる。真実
一方で、アメリカの表現に対するベトナム人としての視点という立場のみならず、ベトナムにおける事実に対して、アメリカという地を経たがゆえに捉えなおすことのできる彼の出自ならではの視点もある。ヘリコプターの戦争であったベトナム戦争後のベトナムにおける人々のヘリコプターに対する異なる視点を表現するなど、人々の感情を平面的な視点としてとらえなおして、表現に落とし込んでいるあたりは、新たな真実を我々に提示してくれる視点ともいえる。
二つの世界
二つの世界を行き来したディン・Q・レであるが故のさまざまな視点を感じることのできる展示。戦争に対しては、常に複数の真実が登場して、そして、人々の感情を無視したところで、あいまいさが時間とともに記憶の彼方へと埋没させていく。そこに対して、なすすべがないのは事実であろうし、そうであることもまたいいことともいえなくはない。
ただ、そこに一つの視点を提示することが、何か違うものを鑑賞者に残してくれることもまた事実である。そんなことをこの展示を見ながらつらつらと思いました。
関連リンク：
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